『ゴースト・ドッグ』(ジム・ジャームッシュ)
1999年製作。ジム・ジャームッシュ監督、フォレスト・ウィテカー主演の一風変わった殺し屋を題材にした映画。
はじめに言っておくと、この映画の全容をつかめた気というのはまったくしなくて、どんな言葉を紡いでも浅いものになりそうな気がしている。だから、優れた感想は他の人や、もし書ければ未来の自分に任せたい。
物語自体は難しいところはひとつもなく、むしろシンプルな部類に入る。
フォレスト・ウィテカー演じる殺し屋「ゴースト・ドッグ」は、21世紀も近い時代になって伝書鳩で連絡を取り合い、『葉隠』を読んで武士道に心酔するといった古風な一面がある一方、殺しを遂行するにあたっては新しい技術を導入し、移動中の車のなかではHIP HOPを聴くといった面も持つ、新旧合わせもつスタイル。
劇中でも何度か語られるのだけれども、すべては「武士道」の行動様式から成るものであり、ひいては、ジャームッシュ監督による創作の作法を体現しているものではないかと思えてくる。
まず、オープニングで鳩が舞う姿に合わせてHIPHOPのトラックが流れる。単純にかっこいいんだけれども、ここは、すでに絶滅してしまったリョコウバトと、その時点で最新の音楽だったHIPHOPを合わせる手法がまさに、古くから引き継いできた手法と、新しい技術を組み合わせた映画をこれから披露するぞという宣言に他ならない。
そして物語は、ひたすら「ゴースト・ドッグ」の美学に沿うように進んでいく。要は、監督自身がかっこいいと思っているものを詰め込んでいる。だから、本来この「かっこよさ」が肌に合わないひとも当然出てくるとは思うのだが、少なくとも僕は「かっこいい」と思った。
それと、物語とは直接かかわっては来ないのだが、親友のアイスクリーム屋の前でバーリーンという黒人の女の子と心を通わせる場面があって、ゴースト・ドッグは読んでいる本(『羅生門』)を貸して、読んだら感想を聞かせてくれと頼む。ここには、無口な彼のぎりぎりの主張の現れであり、また、創作物を通してその人自身を知り、また知ってもらうということ、さらに、その後ラストに置かれたバーリーンの表情を見ると、創作とはスピリットを継承させるものだという思いを新たにせざるを得ない。
よくわからない感想になってしまったけれども、単純に「フォレスト・ウィテカーかっこいい!」というところだけでも楽しめる映画だと思います。
「観てくれ。そして感想を聞かせてくれ」(ゴースト・ドッグ風に)
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