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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

アカルイミライ(黒沢清)

 黒沢清作品で一番思い入れのある映画なので、ちょっとこの映画との思い出について語らせていただきます。

 改めて感じたけれど、「東京映画」だと思うんです。この映画が公開されたのは、僕が高校から大学に上がる頃。実は劇場では観ておらずレンタルになってから(10代の頃は年に1回くらいしか映画館に行かなかった)なのだけれども、この映画には都会への憧憬が凝縮されている。大学の頃何回か繰り返して観た。はっきり言うと、意味は理解できなかった。当時は黒沢清の名前なんて知らなかったし。でも、床下でクラゲが浮かぶシーンとかが不思議と印象に残っていた。今ならある程度言語化できそうな気がするが。ともかく、この「クラゲ」の意味するところを考えるところから、僕の映画の批評眼は鍛えられ始めた気がするのです。当時はやっぱり短絡的に若さゆえの歯止めが効かない感じを現わしているのかなと思った。だから大人には触ることができないのかと。

 で、今回久々に観直して見た。「クラゲ」ってひょっとして、『風立ちぬ』の戦闘機や、『地獄でなぜ悪い』のフィルム缶、『みんな!エスパーだよ』の超能力のことじゃないかと思った。要は、これ表現物を現わしているのではないかと。東京で暮らしていける(=一般にも受け入れられる)ように濃度を調整しつつも、最後は海(=表現の源流)を目指す、そして大人はある程度理解を示すけれども、安易に触れるとけがをする、そんな表現を当時の黒沢清は目指していたのではないかと思った。

 そう考えると『アカルイミライ』は実は黒沢清のフィルモグラフィの中では(まだ全部見てはいないが)異色作ではなかろうか。もし承前のような感想を受け取れるのであればいささか青臭いし、あと床下に水があるとか非現実的なところは多々あるが、全体的に生活感を感じさせる。画面は『叫』や『回路』等の時に比べ白く、時折モノクロ映画を観ているような感覚に陥った。何かが承継されるというエンドは『CURE』にも通じる。ある程度映画に慣れた後でみるとバックホーンの曲はちょっとテーマを説明しすぎかなという気もする(最初観た動機はこれだったのに・・・)。あと、ハスミン息子の音楽は正直言って主張が強すぎて合ってない気がする。
 けれども、自分にとって黒沢清の感触を最初に決定した映画なので、どうしても忘れがたい魅力があります。

アカルイミライ 特別版 [DVD]

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黒沢清監督の『アカルイミライ』発表時のインタビュー。確かに境界というのは黒沢清作品で重要なモチーフ。 http://c-cross.cside2.com/html/a20ku001.htm