OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ニシノユキヒコの恋と冒険(井口奈巳) ★★★★

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(@シネマQ)
 やばいな。すごい好きですよ、これ。好き度で言えば今年入って見た新作映画(といっても4本だが…)ではダントツ。中村ゆりかの透明感と、本田翼のめんどくささと、尾野真千子の母性がそれぞれ魅力的だった。
 手元に資料がないので正確な引用ができないけれど、スラヴォイ・ジジェクによるラカン精神分析の解説書で「女性は自らが欲望するところを知らない」というような文言があって、この映画が描こうとしているのがまさにそこなのかと思った。そんなに難しい話じゃなくても、よく「女性のNOはYESである」と言われたりするじゃん。そういったのを感じとることに長けているが故の悲哀が感じられて、よかった。この読み取る部分の表現がまさに親密さを感じさせ映画的な表現だと思った次第。
 ニシノユキヒコという人物は極めて自我の薄く、それゆえ他者の欲望を写しとることができる。しかし、それは悲劇なのかもしれない。けれども、竹野内豊の飄々とした佇まいがその悲劇性を中和しているので、全体的には爽やかな印象がのこる。正直に言えば、このテーマ性をわりと台詞で語ってしまうので、そこは欠点ではないかと思う。ただ、このテーマは一般的にはそんなに普遍的ではないのかな?その意味では、ある程度の親切設計が必要だったのかも。
 いずれにせよ、忘れ難いシーンがポンポンと出てくるので、間違いなくいい映画です。