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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『OLの愛汁 ラブジュース』('99/監督:田尻裕司)

 椎名林檎フジロックに出演した際に以前のツアーでグッズとして販売された旭日旗が振られたことについてあちこちで話題になった。個人的な所感としては、たとえそれがユーモアだったにせよ、椎名林檎サイドもデリケートさに欠けていたかなという印象を持った。
 ただし、近年の活動は積極的に追ってはいないものの、中学から高校、大学にかけて椎名林檎を愛聴した人間からすると、彼女はもともと政治性の高いワードを政治から切り離した文脈で使うことをユーモアとしていた極めてノンポリなアーティストだという点は強調しておきたい。実のところ、愛車に「ヒトラー」と名付けて批難を受けていた頃から変わっていないのかもしれない。要は、セックス・ピストルズの表層的なフォロワーだったし、「CIA KGB FBIに共産党の陰謀よ」(『スマトラ警備隊』)と唄った相対性理論にまでその遺伝子は引き継がれている。


 ところで、『OLの愛汁 ラブジュース』('99/監督:田尻裕司)という映画には椎名林檎の「ここでキスして。」が使われている。許可を得ていなかったためソフト化の際には削除されているのだが、一度この曲が入ったバージョンも観てみたい。
 タイトルからわかるようにピンク映画であり、2000年のピンク大賞で一位を受賞するなど評価も高いこの作品は、駅に立つ女性のモノローグから始まる。28歳の女性(友美/演:久保田あずみ)が長年つきあってた人と別れたことが観客に知らされる。電車の座席に座る彼女の隣で若い、大学生くらいの男性(タカオ/演:佐藤幹夫)がよりかかって眠っている。女性は思わず男性に口づけするがそこで男性が眼をさます。物語が始まる。
 いま物語が始まると書いたが、実際のところストーリー性は薄い。28歳と20歳の二人が逢瀬を重ねセックスを繰り返す間に、サイドストーリーとして友美の友人(チョイ約だが林由美香!)のストーリーや友美の元カレの話がインサートされる構成。セックスシーンが多いなと思った。多分本編の大半を占める(ピンク映画でア●ス舐めるのを初めて観た)。ただ、よくよく考えればピンク映画だから当たり前であって、多分僕が観てきたサトウトシキとかいまおかしんじとかが特殊すぎるだけなのだ。
 ただ、決して人物描写が浅くなったりもせず、二人きりのシーンなどはその部屋の生活感もあってかいわゆる「ぬくもり」があるし、同時に会話の端々から二人の価値観のずれも感じられる。もう若くはないよなあと思っている人が若い人と対面した時の感覚がこの歳になるとありありとわかる。
 それと、正確な撮影時期はわからないけど、この映画を見ると1999年の冬のあの空気を切り取っているように思うのだ。劇中に出てきた日付だと1999年のはじめごろのお話ということになるのだけど、公開が同年2月だからひょっとするとそれより前なのかもしれないし、超早撮りだったのかもしれない。ただ、あの頃14歳だった僕が感じていたあの頃の日本の空気がこの映画にはパッケージングされていると、そう思った。


 さて、非公式とは言えおそらくは椎名林檎の曲が映画に使われたのは初めてだろう。その頃椎名林檎は20歳だった。では28歳の頃椎名林檎は何をしていたかというと、蜷川実花監督の『さくらん』('07)の音楽を担当していた。なんとなくだが、小規模な映画からスタートして、大規模ではあるものの作家の顔が(良くも悪くも)強い映画に辿り着くというのは、椎名林檎のキャリアにも重なる。自由にやれるところからスタートし、商業的なしがらみが多くなる(けどそれなりにうまくやっていけてる)あたりが。そしてそれは、多くの若者が20歳から28歳になるまでに抱える様々な疑問とも重なる。
 それと、この映画の大学生タカオ役の佐藤幹夫は少し峯田和伸に似ている。すなわち、この映画を見れば椎名林檎峯田和伸のカラミが見られる!(んなわけない。)(そもそもDVDでは聴けなかったものと、そもそも出てきてすらいないものについてなぜこんな長々と書いてるんだ、私は)
 90年代後半からゼロ年代初めのころの日本のロックを聴いていた人間にとって『OLの愛汁 ラブジュース』は必見の映画です!!

OLの愛汁 ラブジュース [DVD]

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ここでキスして。

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