OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』('86/原田眞人)

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 アイドルに夢中になったことはない。
 確か中学高校の頃は広末涼子とか優香がいたし、モーニング娘。も全盛期だったけど、当時の僕はロックが好きで、自分で曲を作って自分で唄うことこそ芸術表現だと思い込んでいた(もちろん今はそう考えていません)。あと、正直秋元康は嫌いだった。
 それから10年経って、Perfumeのコンサートに行ったり、前田敦子主演の映画を身に劇場に足を運んだりと、すっかり日常にアイドルがなじんだおじさんになったけど、握手会にも行ったことないし、やっぱりアイドルにはまりきれない。これは優越感でも皮肉でもなんでもなく、ただただアイドルに熱狂できる人をうらやましいと思っている。
 まあ、沖縄在住なのでアイドルに本気ではまったらお金がいくらあっても足りないのだが・・・。

おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』('86/原田眞人秋元康プロデュースのアイドルグループ・おニャン子クラブ横浜スタジアムでのコンサートまでの模様を様々な視点で描く。おニャン子クラブ自身に密着したドキュメンタリーパートと、そのコンサート会場に走って向かう青年たちのパート、横浜スタジアム内でのある陰謀と、それを阻止すべく動く少年(プロデューサーの息子という設定だが演じているのは監督の実子である原田遊人)たちのパートなどが絡み合って描かれる。
 正直なところ、ストーリー性の薄さにより集中力がそがれる部分は多い。ただ、非常に短期間で撮影され公開までの期間も短かったこともあってか、1986年の夏の空気を切り取ることに成功している。これは明らかにこの映画の利点だと思う。あと、オープニングの「セーラー服を脱がさないで」に乗せてメンバー名がテロップで出る演出がカッコよかった。


 この映画の中で関根勤が演じる悪役・スペードのエースの目的というのは単純だ。アイドルというのは時間が経てば劣化してしまう。だからこそ、この横浜スタジアムを爆破してこの世から消してしまうことでアイドルとしての輝きを永遠にさせようというものだ。
 非常に身勝手なファン心理とは思うし、アイドルに熱狂的にはまったことのない人間からすると理解しがたい感覚でもある。先に挙げた広末涼子や優香についてはむしろ歳をとってからの方が好きだし。
 けれども、少し感覚を80年代に戻してみよう。
 ふと、思ってしまうんだよね。かつて一世を風靡したアイドルや女優がテレビに出るたびに匿名掲示板等で劣化しただの言われることについて。そういえば、自分は憧れていたアイドルに関して久々に観てもむしろこっちのほうが・・・と思う口だが、少し前に偶然昔好きだった女の子の写真を観た時、おばさんになった姿を見たのはそれなりにショックだったかも。
 自分の中にも、こういった偏狭な考え方は多少なりとも存在する。若さを絶対的に価値のあるものとする考え方。それはこの映画から30年経った現代のほうが圧倒的に強くなっている。最近の女優さんが若さをキープしているのもその考え方に追従する傾向からだろう。

 しかし、若さというのはいずれ失われてしまう。だからこそ思うのだ。この映画があればそれでいいんじゃないかと。
 あの夏の一瞬の輝きをフィルムに刻みつけていればそれは半永久的なものになる。幸いかな。原田眞人監督が映画監督として評価され、DVDという新たなメディアにも引き継がれた。永遠の美なんかこの世には存在しないかもしれない。それならばせめて、美しかった時の自分を残す映画という装置を愛でよう。
 きっとこの映画を本当に楽しめるのはリアルタイムで経験した人だ。おそらくは今40~50歳くらいの世代だ。
 ちなみに僕は、まったくおニャン子クラブのメンバーの区別がつかなかった。それがこの映画にはまりきれなかった理由の一つかも。工藤静香とか渡辺満里奈とかおなじみのはずの人もいたにも関わらず、だ。ワシもトシかのー。


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