OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(2017)

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 1994年にフジテレビ系列でオムニバスドラマ『ifもしも』の一編として放映され、のちに劇場公開された岩井俊二監督の作品を、『モテキ』('11)などで知られる大根仁が脚本を手掛け、『魔法少女まどか☆マギカ』('11)などで知られるシャフトが製作したという、複雑な成り立つを持つリメイク作品。もともとは小学生だった設定を中学生に変え、もうすぐ転校する少女・なずな(広瀬すず)と康一(菅田正輝)の夏の一日を描く。

 この映画では「ループもの」という、わりと近年のアニメでは多用された構造が使われている。これは本当は原作になったドラマのフォーマットが「選択における可能性の分岐を示す」というものだったため、言うなればグッドエンドもバッドエンドも並列で描かれるような部分があったのに対し、今作では「ループにより最善に結末を探る」という、直線的な構成になったように思う。このあたり、かつてセカイ系とかで語りあった人たちには格好の餌かもしれないけど、そのあたりの盛り上がりが見られなかったあたり、このシーンって本当に壊滅したんだなと思わざるを得ない。

 とはいえ、わりと楽しめた。
 円のイメージの繰り返しが円環構造と重なる画面は、単純に映画的快楽があると思ったし、過去の映画からの引用(一番の大ネタは『ミッドナイト・クロス』('83))がアニメで再現された部分では自分の中の映画史がつながるような快感を覚えた。

 自分の中の映画史と書いたけど、この映画、なずなのキャラクター造形を見て、自分の、いや、自分のようなアラサー世代の漫画史にとっては重要な作品じゃないかなと思った。
 どことなくだけど、なずなのキラキラお目目にカエル口のキャラデザに、童貞が脳内で考えたような不自然なセリフの数々といい、かつて週刊少年マガジンで連載されていた恋愛オムニバス漫画『BOYS BE...』('91-99)を観ているような感覚に陥った。
 だから、この映画に対する態度は、そのまま『BOYS BE...』に対する態度につながるんじゃなかろうか。
 この、完全に連載時期が90年代に合致する気恥ずかしさを伴うコミックではあるけど、最近ではBaseBallBearの小出佑介がライムスター宇多丸の番組に出演した際に特集したりと、決して、忘れられた作品ではないと思うのだよね。
 セカイ系ではなく、気恥ずかしさの言語化として、この映画について語られることを望む。