OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』

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 アメリカの監督ジェームズ・フォーリーの作品。アメリカでヒットした官能恋愛小説『フィフティ・シェイズ~』シリーズの2作目となる。ちなみに、前作は観てません。

 実はジェームズ・フォーリーの前作『パーフェクト・ストレンジャー』('07)は劇場で観ている。劇場で観て、酷評した覚えがある。その頃はジェームズ・フォーリーがシネフィルに人気がある監督だとは知らなかったが、今見たら印象も変わるのだろうか。

 端的にいえば、変な映画だった。物語としては取るにならない。SMを題材にした物語としてはテーマへの踏み込みが甘いし、構成だって全部で6か所あるラブシーンはダコタ・ファニングの脱ぎっぷりこそ景気がよいものの、それらのラブシーンを盛り込んだせいで「結局このパートいらないんじゃね?」というようなシークエンスも存在する。少なくとも、万人におすすめする気はない。
 ただ、個人的にはこういった「取るにたらない脚本を豪華な画や演出で映画にしている」作品というのがどうしても嫌いになれない。この枠、最近だと『デスノート Light up the NEW World』('16)、『貞子VS伽椰子』('16)や『昼顔』('17)あたりが該当する。

 たとえば、冒頭で就職したダコタ・ファニングのもとにおそらくは前作でひと悶着あったと思われる男から白い花が届く、この花を持ってゴミ箱に捨てようとする(足で押して開くタイプのゴミ箱なので動きもスマート)も、結局辞めるという画面の横幅を目いっぱい使った画面の気持ちよさよ。全体的にこのような感じで、若干ダークな色調で構図がしっかりした画面が続く。
 かと思えば、会話シーンの切り返しの多さも特徴的だ。この切り返しの多用がどんな効果を出しているのかは詳しくはわからないけど、すくなくとも画面への集中に寄与していたんじゃないかなと思う。
 一方で、ラブシーンに音楽が必ずかかるところなんかはめちゃくちゃ金がかかった洋ピンみたいだなと思ったり、プロポーズの次のシーンがCEOの人の筋トレだったりと、変なところで外しにかかる。このあたり、やっぱりいびつな映画だと思えてくる。CEOの人がヘリコプター事故に遭って、愁嘆場もそこそこに生きて帰ってくるシーンは、これが幽霊映画である可能性も残していると思わざるを得ない。

 それで、結局この映画は何だったのかというと、僕は007シリーズのボンドガールに関する部分だけを取り出して2時間にしたような映画なのかなと思います。
 序盤でダコタ・ファニングとCEOの人がダイナーで話合う場面で、窓の外に傘を持った人たちが行き来するところはスパイ映画の原点ともいえるヒッチコックの『海外特派員』('40)を連想したし、それからダコタがiphonemacbookなどAppleセットをプレゼントされる場面の渡し方なんて007シリーズでQからボンドに秘密道具が渡されるときのそれだった。CEOの人(何度も連呼しているけどジェイミー・ドーナンのことです)がここぞという時にタキシードに蝶ネクタイでキメるさまもボンドっぽい。

 だから、最近の007シリーズが不満だった人にはオススメです(テキトー)。