OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

book

中年になって普通になった とたんに俺は鬱になった(韻踏み)~吉田豪『サブカル・スーパースター鬱伝』

プロインタビュアーとして名高い吉田豪が、ジャンルは違えど各分野で名を馳せているサブカル有名人が40歳前後に経験した「うつ」についてインタビューをした『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間文庫カレッジ)を読んだ。サブカル・スーパースター鬱伝 (…

ソポクレス『オイディプス王・アンティゴネ』(新潮文庫)

アンティゴネはまだ普通な印象を受けたけれど、オイディプス王はすごい。ばかみたいな言い方になるけれども、お勉強としてではなく今読んでも十分面白い。 ギリシア悲劇として名高い作品だけど、悲劇がなぜ悲劇かって言うと、物語が始まった時点、あるいは、…

村上龍『イン・ザ・ミソスープ』 (幻冬舎文庫)

村上龍はあまり好きな作家ではない(考え方が相いれない)のだけれども、やっぱり小説家としての腕は認めざるを得ないというか、読みやすくてかっこいい文章を書いてくれるなあと思う。 この小説を読んで、ふとU多丸が『渇き。』評の時に、90年代っぽいと言…

村上春樹『女のいない男たち』(文芸春秋)

なんて言うんだろう、今の村上春樹は「鬱期」にいるんじゃないか(本人が鬱かどうかは関係なく)。もっとも大きな違いは、かつて存在したユーモアが貼りを失っているような気がしたこと。 この短編集には流行りの言葉でいう「NTR(寝取られ展開)」が頻出す…

岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』(新潮新書)

実は後半何度か落涙した。加害者を更生させるには自分の罪を自覚させること、そのためには負の感情を吐き出させ、そのおおもとはどこにあるか(家庭環境に含まれることが多い)を探り当てる必要がある。 他者を頼ることのできる人間になること、「弱さ」を見…

小田切博『戦争はいかに「マンガ」を変えるか―アメリカンコミックスの変貌』(NTT出版)

近年映画が盛り上がっているアメコミについて勉強する目的で読む。改めて気付かされたのが、アメコミというのが若い文化という印象があるがロックンロールよりも歴史のある文化だということ。 タイトルで言われていることは、戦後において急激にアメコミにお…

『タモリ論』/樋口毅宏(新潮新書)

『さらば雑司ヶ谷』等で知られる作家・樋口毅宏の手によるタモリを初めとするいわゆる「BIG3」を題材にした新書。とても面白かったです。 厳密に言えば、「論」ではない。論文というにはあまりにもセンチメンタルすぎるし、論拠も徹底されていない*1。だが、…

鹿島田夏希『冥土めぐり』は現代の『斜陽』かもしれない

遅ればせながら芥川賞受賞作『冥土めぐり』を読みました。 最初は「大丈夫か?この小説」と思った。イ・チャンドン監督『オアシス』('02)を連想させる設定ではあるものの、障碍者に美徳を重ねるのは陳腐になりかねないし、母や弟のキャラクターも類型的な印…

遠い太鼓(村上春樹)

ぼくには旅に出る理由なんて何ひとつない!2012/8/1読了 村上春樹の旅行記。1986年から1989年までイタリアを拠点に南ヨーロッパで生活した際の様子を描く。 おそらく、前に読んだ西村賢太は村上春樹が大嫌いだろう。 ただ、ちょうど『苦役列車』('10)の時代…

苦役列車(西村賢太)

私小説とはゴシップ的愉しみ・2012/7/31読了 西村賢太の芥川賞受賞作。初めて読みました。 ぼく自身、大学を留年していたころに肉体労働、それこそこの小説に出てくるような倉庫で働いていたことがあって、それも夏真っ盛りの時期だったから、この小説を読む…

小島信夫『アメリカン・スクール』

日本文学に燦然と輝く名作ながらも、何度か読んでは途中で挫折していた本。 久々に読んだら、思いのほか読み進められました。 総括して、ブラックながらもコメディタッチの作品が多いので、読みやすいとは思う。例えば、「汽車の中」は敗戦直後の密集した電…

映画もまた編集である ウォルター・マーチとの対話/マイケル・オンダーチェ(みすず書房)

ライムスター宇多丸さんが自らの番組でお勧めしていた本、ようやく読みました。 『ゴッドファーザー』や『ジュリア』等の編集で知られるウォルター・マーチさんという方に、作家であり、自身の作品『イギリス人の患者』が『イングリッシュ・ペイシェント』と…

謀殺のチェス・ゲーム/山田正紀(角川書店)

昭和51年に出版された山田正紀のアクション小説。初めて読みました。 まず、文句なしに面白い。基本設定としては行方不明となった軍用機・PS-8の奪還を巡るストーリーで、自衛官であり新戦略専門家である宗像と、彼の同僚であり略奪事件には塙産業の参謀とし…

中島美代子『らも―中島らもとの三十五年』

2004年に亡くなった作家・中島らもの半生を夫人の美代子氏が振り返った書。 僕は中学生のころから中島らものエッセイをよく読んでいた。堕落した生活やヒッピーに影響を受けたと思われる思想を柔らかくユーモラスな文体で語る中島らも氏のエッセイを愛読…

マイ・バック・ページ−ある60年代の記録−/川本三郎(平凡社)

本当に苦しみながら描いたんだろうな、 或る意味で言い訳がましいともとられかねない文章からそんなことを感じた。やはりハイライトとなるのは、映画化された部分。映画では松山ケンイチ演じたKという存在は、あくまで偽物。 彼にコミットしていった過程が…

美しい星/三島由紀夫(新潮社)

三島由紀夫は全部読んだことは無いのですが、この作家の特徴として挙げられるのは、「美への執着(これは妄執といってもいいと思います)」 それと、特殊な感情を持った者の持つ離人感ですね。 三島由紀夫はそれらの説得性を出すために、これ以上ないほどの…

杉下右京の事件簿/碇卯人(朝日新聞出版)

まず、面白いと思ったのは、1本目の『霧と陰』のほうが明らかに杉下右京という人物に対する描写をオミットしていること。 むろん、この本を手にする人にとっては杉下右京がどういう人か自明のことであろう。 だが、ここまで省いて大丈夫なのと思うくらい。…

斜陽/太宰治

太宰治の代表作。 久々に読む。 人は恋と革命のために生まれてきた、か・・・。 日本では民衆革命によって社会が動くということが(少なくとも欧州に比べては)なかった。 だからかどうかは知らないけれど、日本人にはある種の諦念が根付いている。 それは、…

I'm sorry, mama/桐野夏生

最近話題になっている結婚詐欺連続不審死事件。 この事件を聞いて真っ先に思い浮かんだのがこの小説だった。 この小説の主人公の女性は、自らの手段のためなら人を殺すことも厭わない。そもそも善悪の概念すら私たちのそれとは大きく異なっている。 また、外…

変愛小説集

「変愛」です。「恋愛」でも「偏愛」でもなく。 このアンソロジーの中には、訳者の岸本佐知子さんが編纂した「変」な恋愛小説が11編おさめられています。僕はニコルソン・ベイカーしか知らなかったのですが、どれも面白く読めました。 「変」とは通常とは「…

先週の読書記録

ライトノベル、多め。2009年7月20日 - 2009年7月26日の読書メーター 読んだ本の数:14冊 読んだページ数:3806ページ ■あそびにいくヨ!〈7〉とってもあついのキャーティアシップ (MF文庫J) これは今までで一番バカな回かもしれない。どのアニメにも一回はあ…

先週の読書記録

2009年7月13日 - 2009年7月19日の読書メーター 読んだ本の数:7冊 読んだページ数:2456ページ■北回帰線 (新潮文庫) おそらくは、ミラー自身のパリでの生活をもとにした、酒と性愛に満ちた活気溢れる交流の物語。でもミラーってパリ生活の頃はすでに30〜40代…

先週の読書記録

2009年7月6日 - 2009年7月12日の読書メーター 読んだ本の数:9冊 読んだページ数:2419ページ■偶然の音楽 アメリカの自由、そして絶望。男二人のロードムービーは展開を二転三転し、思いもよらない結末へ辿り着く。壁を造る仕事が人間に課せられた原罪を象徴…

先週の読書記録

翻訳強化月間実施中 2009年6月29日 - 2009年7月5日の読書メーター 読んだ本の数:4冊 読んだページ数:1558ページ■ガープの世界〈下〉 上巻の感想でこの物語は混沌としていると書いた。下巻に入りますます混沌を増してきたようだった。けど読み進めるうちに…

6月の読書記録

ああ、このころはひたすら受験勉強やってたなあ 2009年6月の読書メーター 読んだ本の数:18冊 読んだページ数:4787ページ■ガープの世界〈上〉 初アーヴィング。生と死と精子と戦争と女性運動と教育と文学の混沌の中からすくい上げた強い物語。濃いです。ガ…

5月の読書記録

5月は遠くになりにけり 2009年5月の読書メーター 読んだ本の数:24冊 読んだページ数:7601ページ■パラドックス13 自分が読んだ東野作品の中では最もSF度合いが強いと感じた。全編を通して、兄と弟の口を借りて理性と感情の、公と個の対立が描かれていて面…

先週の読書記録

5月6月はあまり読めないと思います2009年4月27日 - 2009年5月3日の読書メーター 読んだ本の数:4冊 読んだページ数:1511ページ■銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫) 今まで読んだSFとは違う印象。「家畜人ヤプー」が近いかな?自虐的なジョークが。ドタバ…

先週の読書記録

2009年4月20日 - 2009年4月26日の読書メーター 読んだ本の数:11冊 読んだページ数:2413ページ■パスクアル・ドゥアルテの家族 スペインのノーベル賞作家、セラの小説。殺人者の一生を手記形式で綴ったもので、時系列がはっきりしない部分なども多い。信頼で…

先週の読書記録

2009年4月13日 - 2009年4月19日の読書メーター 読んだ本の数:8冊 読んだページ数:2408ページ■シャングリ・ラ 下 (角川文庫) 面白かった。多少収束に手間取った感じはしたが、これだけ多くの要素が盛り込まれた物語を紡ぎだした作者に拍手を送りたい。初め…

先週の読書記録

かつてないほど本が読めなかった週だった。しかも2/3が根本敬…。 2009年4月6日 - 2009年4月12日の読書メーター 読んだ本の数:3冊 読んだページ数:884ページ■赤朽葉家の伝説 「ブルースカイ」「青年のための読書クラブ」ときて、これが桜庭一樹のひとつの到…