OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

Mr.Children「シフクノオト」

 ミスチル11枚めのアルバム。一言で言えば、濃い。
 正直に言えばこのアルバムタイトルは全くピンとこなかった。至福の音といえば、僕がイメージするのはムームとかシガーロスあたりのエレクトロニカ。漢字違えて私服の音なら、ハナレグミやそのルーツミュージックとなるフォークやソウルが思い浮かんだからだ。想像力が貧困だといわれても仕方がないが。僕がミスチルの音から感じるものは疲労感だ。もちろん、ミックジャガーのしゃがれ声からも疲労感は感じるんだけど、ミスチル桜井氏の声に感じるのは、そのような労働的なものではなく、もっと現代的な感じ。労働というよりも、仕事やコミュニケーション、恋愛などに疲れて病んだ印象だ。だから、ミスチルのアルバムの中にあるアコースティックサウンドは休日のイメージがあるし、エレクトロニカサウンドには都会の夜のようなイメージがある。
 M-1「言わせてみてえもんだ」のグラムロックのようなイントロから疲労感が漂ってくる。M-2「PADDLE」、M-4「くるみ」は躁状態の曲だが、やはりその前提としての悲惨な現状というのがある。実はこの2曲はメロディへの言葉の乗せ方に若干不満がある。そして、M-3「掌」は断罪みたいな曲だ。聴いて、心が壊れるような印象を受ける。次のM-5「花言葉」は、スピッツの曲だよって言われれば信じるだろう。別にパクリとかではなく、表現するための方法論が似てしまっただけだろう。少しニューミュージック的。M-6.7はヘビーなアレンジ。曲の内容もかなりうつ入っている。M-8「空風の帰り道」は少しハナレグミっぽい。穏やかなかんじが休日を思わせる。M-9「Any」はシングルナンバー。普通な印象だけど、サビの開放感がいい。M-10「天頂バス」は、電子音がどこか不穏さを感じさせるナンバー。M-11「タガタメ」は社会派ミスチルの総括みたいなナンバー。ただ、少し取っ付きづらい気もする。そして、M-12「HERO」は広がった挙句日常にすとんともどるかんじがよい。
 全編通して聴くとこれが2004年に鳴らされるべき音だったんだとわかる。このあとBank Bandとして桜井氏が参加したアルバムを聴いても、時代の疲労感を表現することで、同じような疲労感をもったひとを、救うでもなく、ただ寄り添おうとしているのが。それが「シフクノオト」なのだろうか。

シフクノオト

シフクノオト