OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

イノマー・ミネタカズノブ『真夜中のふたりごと』

 引越しシリーズ。読んだのは去年の夏。
 きっとPTAとか毎週クラブに通う姉ちゃんとかサッカー部のモテモテ野郎とかには何の意味もないけど、ある種の人間にとってはかけがえのない悪書、ミネタの言葉を借りるとそういうことになるのだろう。ミネタはこの時期「童貞ソーヤング」をリリースして、着実にゴーイングステディの存在が単なる青春パンクバンドから様変わりしてこようという時期だ。ファンのふるい落としも行われただろう。
この本の内容は、はっきり言えば「汚い」。ザラザラの紙に印刷されたふたりのトークはひたすら下ネタに徹している。読む人が読めば、何で下ネタになんか金を払う必要があるなんて思うだろうね。
正直言えば俺は下ネタを話すのは好きだ。そして、この本で繰り広げられている下ネタは多分俺ら20代男子が日々繰り広げているやつと大して変わることはない。だけど、この本は特別だ。なぜかって、それはイノマーミネタが中学・高校と自分の中の暗闇や性欲と対峙してきて、その結果二人はまるで生き残りの兵士のような様相をしているからだ。きっと俺らは誰でも生き残りの兵士になれる素質があって、だからこそその生き残りの兵士として表現を続けている二人に惹かれるのだろう。出典は忘却したがイノマーがかつて雑誌にこのようなことを書いていた。「(ボクの歳で)いまだに毎日ロックを聴いてオナニーをしているのはボクくらいかもしれない」
この本の中で一番面白く読ませてもらったのは「人生を台無しにした名盤」と「わが性春の十選」の二つ。どんな音楽評論家のいう言葉よりも本当に青春を一緒に通り過ぎてきたという証言のほうが心に残る。そして、ここまでさらけ出せるからこそ信用できるのだろう。

イノマー&ミネタの「真夜中のふたりごと」

イノマー&ミネタの「真夜中のふたりごと」