OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

中島みゆき「Singles 2000」

 中島みゆきが2000年に出した編集版で、1994年リリースの「空と君とのあいだに/ファイト!」から2000年リリースの「地上の星ヘッドライト・テールライト」までを収録している。正確に言えば「糸」の初リリースは1992年だし、「ファイト!」に至っては1982年だ。だけど、僕と同い年くらいの人、つまり小学生くらいのころに「空と君とのあいだに」を聴いたことがあるってくらいの認識の人は、ここから入ってみると深遠な中島みゆきの世界への最高の入り口になってくれると思う。
地上の星」 『プロジェクトX』のオープニングテーマとしてもおなじみの曲で、発売から2年以上してミリオンセラーを達成した脅威の曲。2000年以降ほとんどなかったミリオンセラーをこの曲が達成したというのは、話題性もあったのだろうけど、この曲のもつ弱者の視点からのメッセージに多くの人が共感したからだと思う。イントロのドラムの叩き出しから心揺さぶられる感じがして最高なんだけれども、サビの歌唱がとにかく迫力があって、勇気付けられます。
ヘッドライト・テールライト」 同じく『プロジェクトX』のエンディングテーマ。優しげなサビのメロディが一日の終りを思い起こさせて、明日への活力になってくれる気がする、そんな曲。
「愛情物語」 平凡な人生にスポットライトを当てる人生賛歌。中島みゆきの演劇的な歌唱法が一番冴え渡っている曲だと思う。
「糸」 初出は1992年のアルバム「EAST ASIA」にて。Bank Bandがカバーしたことでも有名ですね。少し仏教的な慈愛を感じさせるナンバー。包み込むでいて、凛とした中島みゆきのボーカルには舌を巻く。
「旅人のうた」 「家なき子2」の主題歌。サビは「空と君とのあいだに」に比べれば地味だけど、人生を旅に例えた、味わいの深いナンバーだと思う。芯の通ったボーカルが印象的。
「空と君とのあいだに」 「家なき子」の主題歌。改めて聴くとこの歌詞はすごいよ。よくドラマなんかで出てくる「愛しているからこそあの人には幸せになってほしい」というせりふ。いつもう嘘臭いと思ってきたよ。だけどこの歌に出てくるのは本物の気持ちだ。愛する人に裏切られ悲しむ「君」と、それを見守ることしかできない「僕」。自分の無力さを嘆きながらも「君」の幸せを願う姿に心打たれる。「君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる」なんてなかなか言えるものじゃない。
「ファイト!」 この歌に関しては、僕がいくら語っても無駄なような気がする。ドラムの音からはじまって、まるで独白のような歌唱法で入る中島みゆきの声。近年に比べてストレートで、純粋な感じさえ受ける声。一つ一つ丁寧に語られる、底辺でつぶされそうな人たちの話。彼ら彼女らに向かっての応援「ファイト!」。僕はあまり泣くことはないんだけど、この曲だけは泣かずにいられない。この曲を初めてフルコーラスで聴いてからずいぶんたった。あれから僕は戦っているか? 戦うやつらを笑ってはいないか? 戦わないやつらに笑われたとき、嫌な顔をしていないか? 俺も、ファイト!
〈最後に〉 それまでロック一辺倒だった僕が、歌というものの力を再確認したアルバム。歌の力を知りたい人は中島みゆきを聞け!!

Singles 2000

Singles 2000