OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

The ピーズ「マスカキザル」

 1990年リリース。まるでインディーズ版のようなジャケットとタイトル。このジャケットは80年代のインディーズパンクバンド「マスターベージョン」のアルバムに似ていると思う。
 前作よりもさらにハードになった演奏に、30分ちょいという収録時間。ドラムに、当時ドラム暦8ヶ月だったウガンダというメンバーを向かえているんだけど、こういった一連の行為は、どんな表面的にハードに見えるバンドよりもハードだと思う。
 全体を通して暗闇の印象があるアルバム。ラストの「バイ菌マン」で毒づいた末に自虐の底にはまったようなはるの叫びが聞いた後もしばらく耳から離れない。
 一曲目の「いいこになんかなるなよ」は完全なガレージナンバー。おそらく、向上思考のもと育てられたであろう多くの人にはすごく判断を迫られるナンバーであると思う。はるは死んでもガンバレなんて言わない。それは、ガンバレという言葉が与える重圧を知っているから。この曲は、言葉の一面的なところだけを取り出してはいるけれど、スピーカーかヘッドフォンのむこうのあなたを肯定するナンバーなんだと思う。クズだということを認めて楽になりなよって。それがいいことなのか悪いことなのか、今の僕には判断がつけられないけど。いいこになんかなりたくないや。
 2曲目の「どっかにいこー」はさわやかで、裏拍のギターが印象的なナンバーなんだけど、詩の内容は、なんで僕の好きな人に彼氏がいるのだろう、そんなやつとなんか別れちゃいなよ。って、けっして本人には告げないけど、詩にしている、そんなうた。
 表題曲の「マスカキザル」はすごい。ブルージーなギターにのって、やる気な下げに歌われるのは「いい女でかければいい マスカキザル夢見るだけ 見るのはタダだぜ」ってこと。2番なんかもっとすごい「いい女でかければいい つきあいなどつかれるだけ」って、はっきりとコミュニケーションに付きまとう疲労を表明している。けど、これを聴いて感じる人は少なくないはず、特に現在は。
 そのほかにも、「いんらんBaby」の妄想加減とか最高だった。完成度としてはもっと高いアルバムはあるけれど、もう二度とこんなアルバムは出ないだろうなという一枚。

マスカキザル

マスカキザル