OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

恋の門

 松尾スズキさんの初監督作品で、原作は羽生生純さんの漫画。内容は、漫画芸術家・蒼木門(松田龍平)はひょんなことからコスプレイヤーで同人誌漫画家の恋乃(酒井若菜)に出会う。門に興味を魅かれる恋乃だったが、彼の漫画は石を用いたもので世間が到底理解してもらえるとは思えない。また、常識しらずの門との価値観の違いにもぶつかる。しかし、恋乃と門はさまざまな事件を通して互いに引かれていく。ある日、恋乃と門は声優のツアーに出かける。そのツアー終了後、門は行方不明になっていた。
 ゲロ4回。人死に2回。コメディ映画。それがこの映画。
 ゲラゲラ笑えるシーンもあるし、すごく美しいシーンもある。門って、たぶん普通の人から見たらキ○ガイだ。けど、門から見たコスプレイベントも言ってみたらキ○ガイの世界だし、門がひょんなことからまったく違う世界へと迷い込んだ印象が強い。全体を通して、いつ夢落ちになってもおかしくない作品だなと思った。それくらい、現実感が希薄な作品。さり気に豪華キャストだったりする。
 これは「アイデン&ティティ」を見たときにも思ったことなのだけれど、田口トモロヲさんにせよ松尾スズキさんにせよ、映画を撮ることを本職とした人ではない。彼らは、本職映画監督みたいな美しい芸術的な映像は取れないかもしれないけど、その分知恵を使って今までにない映画を撮ろうとしているのが伝わってきた。
 あと、一度でも芸術と現実世界における常識の拮抗について考えたことがある人は、この作品を見るべきだ。自分がやりたいことをやることと、愛する人を守ることの間のギャップ、とか、創作に喜びを見出すこと、とかそういったものが、おそらくはほぼすべて入っているから。
 あと、この作品に出てくるどの人も、演技がうまいというか芸達者だと感じた。主演の二人はこれ以上望めないくらいのナイスキャスティングだと思う。松田龍平による門は社会に適合できない感じが出されていてよいし、酒井若菜による恋乃は、恋乃のほうも実はかなりの社会不適合者であるって言う証明みたいなアホアホな感じが出てて面白い。ラストをドタバタで終わらせたのもよかった。(86/100)