スガシカオ「SWEET」（1999）

　スガシカオの1999年第一弾シングル「夜明けまえ」はシカオもパブリックイメージを外側からクリックしたような曲だった。緻密な描写、閉塞感を感じる叫び、そのどれも誰もがイメージするスガシカオ像だった。ただ、この曲は今までになくアレンジがポップスに近づいていた。すごくわかりやすかった。
　そして、間髪をおかずに「あまい果実」がリリースされた。愛する人が離れていくのにどうしようもできない状況を歌った歌詞は相変わらず緻密で、同様の思いを持っている人には最大のカタルシスになるだろう、はずなのに、まるでそのカタルシスさえ拒むような曲の構成、サビとメロが分離したような構成には驚いた。けど、そのすわりの悪さも含めて、この曲の主題だったのかもしれない。そして、秋にリリースされたサードアルバム。
　確かに「正義の味方」「師走」「いいなり」の歌詞は今までにない意表をついたものなのかもしれないが、それ以外は普通の歌詞だ。「グッド・バイ」なんて最初から最後までねじれたところがなくて、「愛について」路線ができたのかなんて思ってしまう。「愛について」には及ばないにせよいい曲だとは思うが。
　僕はアルバムの全体的な構成は一番だと思っている。純粋に曲とトラックのよさを追求したようなアルバムだ。もともとスガシカオは閉塞をテーマにしているとはいえ、そのテーマが陽水「傘がない」から綿連を受け継がれてきたタイムレスなものなのだが、ここにきていよいよ息の長いシンガーソングライターになるのかと思った。
「ぼくたちの日々」の暖かいアレンジがいい。

Sweet