OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

eastern youth「雲射抜ケ声」(1999)

 イースタン・ユースが1999年にリリースしたアルバム。全体を通して、確かに重いというか、その重さもポージングとしてつけられたものでは決してなく必然性のある重さという気がする。
 イースタンは1998年ごろからメディアにも盛んに取り上げられるようになり、時はおりしもコア系ロックブームで、その辺の首にタオル巻いているような兄ちゃんにも聞かれるようになったわけだけれども、このアルバムはそんな気分を吹っ飛ばすような、精神のエモーショナルコア。日本男児でこれ聞いて何にも感じないやつは金玉とっちまえ!それぐらい言いたくなるようなロック。
 日本男児は気迫もさることながら、季節を感じ取る心がなくてはならない。でなければ歌など歌えないからだ。このアルバムは、リリース時期もあるだろうけど、冬の情景が思い浮かぶ。冬といえば、イースタンの3人の出身地北海道の冬だろうか。
 「馬鹿げた感傷だぜ 目を上げる」しかし、そんな感傷におぼれることなく歌うのは生活の中での歌だ。油断していると覆い被さる劣等・自責の念。そういったものを振りほどいて明日へ向かうのだと歌う。自身がその戦いの最前線にいる者たちだから信頼が置ける。
 たしかにイースタンは1998年の初メジャー作品のリリース後、歌はポップにはなった。しかし、このアルバムを聞けば、プログレやジャムなど、6年前には今よりもポップシーンになじみがなかったような音楽を前に出し、聴きやすいとはいえないものにしている。そうして作られた緊張感は、まるで文学作品に接するような気持ちを起こさせる。さあ、ファッションとしてパンクを聞くやつは帰った帰った。けど、自分と一度でも正直に向き合ったことがある人なら、きっと通じるものを感じるだろう。
 10曲目に収められている「地下室の喧騒」の、ペラペラなギターとやけにポップなメロディはナンバーガールへの敬意を示したのだという。文豪から文豪へ送られる書簡のようなものなのだろうか。

雲射抜ケ声

雲射抜ケ声