OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

木尾士目「げんしけん」

 2002年よりアフタヌーンで連載開始された、オタクな大学生の日常をほぼありのままに描いた漫画。アニメ化もされたらしい。てか、よくアニメ化されたな。一番そういったものとは縁遠そうなんだけど。
 それと、この漫画がすでに3年以上も連載が続くほどの人気漫画であることも特筆事項であると思う。
 大学のサークルを「部室」中心に描いた漫画って、ひぐちアサの「ヤサシイワタシ」とか、遠藤浩輝の「神様なんて信じていない僕らのために」とか、どっちにせよアフタヌーンだけど、それくらいしかないと思う。サークル活動って、一言で言ってしまえば「ヌルい」から。*1僕は合唱部に所属していて、一応は「部活動」に属している。それなりにきついが、それでも授業の空き時間に部室にたまって漫画を読んだり音楽を聴いたりすると、ああ、モラトリアムだな、なんて思ったりするものだ。3年になってからはあまりないけど。
 そういった「ヌルい」日々を、はたして漫画に描いて面白いのか。現に、映画、ドラマなんかのジャンルじゃ間違っても中心にすえられることのないテーマだ。僕のように、サークル活動にそれなりに熱を持って取り組んだ経験があるものなら、そりゃ楽しめる。けど、不特定多数の人が見る可能性のある漫画とかだと、描きづらいんだと思う。
 だけど、この漫画は成功している。
 今は「電車男」の影響もあってオタクブームといわれるけど、せいぜいドラマや映画なんかにオタクを描くことが可能になったって感じ。あ、それと、普通にその辺のジャンルでガンダムエヴァからの引用が見られるようになったかな。けど、一般的なオタクの世界って、やっぱりとっつきづらいと思う。「萌え」の価値観とか、知識の量をためる行為とか。けど、この2つが一般的に受け入れられて、初めて00年代のカルチャーが生まれた気がする。
 で、この漫画。最初はやっぱりとっつきづらい。実在する漫画に対して語っているのならともかく、架空の漫画に関してずっと語っているのだから*2。けど、高坂真琴の、外見とオタクな中身とのギャップや、高坂につられ足を踏み入れてしまった非オタの春日部と、現視研のメンバーが引き起こす騒ぎとか、見てて楽しいんだよね。あと、サークルの部室内の雰囲気が、「あるある」って感じで、個人的にはかなり楽しめる漫画。キャラとしては大野加奈子が好きだったりします。はい、巨乳好きです。くそー、田中総市郎*3。けど、田中さんだと許せる気もする。それと、この二人が付き合っていることが判明する展開って、すごくリアル。
 で、ひとつ面白いなって思ったのが、一応主人公で、三代目会長になるまではものすごく影の薄い笹原完士が会長になってコミケで同人誌を出すまで、こことか、その辺の高校部活モノに負けないくらい熱い。つまり、サークルの「ヌルさ」をここで一気に沸点を上げる働きをしてくれたのが笹原だと思うし、連載を追っているわけじゃないから今どうなっているのかはわからないけど、ここがかなりの山場だ。けど、山場がむしろ普段の「ヌルさ」に埋もれそうになるところがこの漫画って気もするけど。
 笹原たちが4年生になってからの展開もすごく楽しみ。

げんしけん(1) (アフタヌーンKC (1144))

げんしけん(1) (アフタヌーンKC (1144))

*1:大学においては目標に対し部全体が比較的一丸となっていそしむ「部活動」と、拘束力があまりない「サークル」にわけられる

*2:ドラマ版「電車男」はその点でかなりオタクにやさしいドラマだったのだな

*3:この名前って音楽評論家のタナソウこと田中宗一郎から?