OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

東野圭吾「白夜行」

 現在、ドラマ化されて話題になっている作品です。東野圭吾さんのミステリー作品ですね。
 東野圭吾さんは、かなり作風の幅がある作家です。ぼくのファーストコンタクトが「超・殺人事件」だったのでそう思うだけかもしれませんが、ただ、一見ユーモアにのみ傾斜しているように見える作品でも、そこには現実における矛盾点を突き、それを実験的に手を変え品を変え突くことでその奇妙さをあらわにするという意味で、ミステリーの性格にのっとっています。
 これは、そんな東野圭吾さんが描く、本格ミステリーです。一言で言えば、完璧な構築です。理路整然とした、理系的な構成で、美しく、空恐ろしくもあります。こういったのを読むと、しがない文系のぼくなどはおとなしく引き下がるしかないです。800ページもあったにもかかわらず、一気に読み終えてしまいました。
 作者本人も語っていましたが、この作品はいわゆる物語の主体となる(でも主人公であるとは限らない)桐原と雪穂という二人の人物を外面から、二人にかかわった人物から描き、そうすることで二人の冷酷さをあらわにするという構成なわけです。ですから、二人の内面描写は出てきません。
 いわゆる物語の核となるタネの部分は、実はドラマですでに知っちゃっていたのですが、もしこのラストを何の先入観もなく見ていたら確実に戦慄モノでしたね。ドラマは、さてどう描くのでしょう。
 あと、大阪というごった返した印象のある町が舞台で、けど登場人物のしゃべる関西弁はいわゆる下衆な感じはまったくせず、もし漫画でいえば太い線で描かれているような、そんな印象を受けました。
 途中に出てくるクレジットカードやゲームの詐欺の話は、おそらく東野さんの実験性の部分でしょうね。あの時代の設備でどこまでやれるかっていう。
白夜行」ってすごい美しいタイトルだと思います。けど、この話で描かれる町はどうしても路地裏で、どこか薄汚れてて、日が当たらなくて、だからこそ彼らにとっての「白夜」が映えるのだと思います。
91/100

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)