高野和明「13階段」
乱歩賞受賞のミステリー小説。
あらすじは、犯行時刻前後の記憶をなくした死刑囚の無罪を立証するために刑務官・南郷と元服役囚・三上は調査に乗り出す、というものです。
ミステリーの感想は書くのが難しい。けどがんばって書いてみます。
とりあえず、この小説を論じるには自分が死刑に対してどういうスタンスか、を明らかにしていなきゃならないような気がする。僕は、死刑制度は一応賛成派です。不勉強な意見ですが、死刑というのは社会に対する悪影響を防ぐためにあるそうです。それで、この作品の中で言われるのは、改悛の情と死刑の関係性で、三上の台詞にもありますが、果たして改悛の情なんてわかるのかということです。南郷のスタンスとしては、たとい死刑囚に改悛の情が芽生えても、それは死刑を受けて生まれたのことだということです。しかし、南郷は死刑を執行したことでそれからの人生を安眠とは無縁にすごします。
この作品の裏テーマとして、果たして死刑は正しいのか、というのがあります。
そして、死刑も含めて人を殺める経験をしたものは、それ以降悔恨の情という刑務官に捕らえられ、自責の念という牢獄の中で終身刑にとらわれるのでしょう。
ただ、エンタテイメント作品としては、この死刑に対する作者の考え方が少しうるさすぎたかなという気がします。トリックも、2箇所ほど気になるところありましたし。複線の回収も確かに辻褄は合っているけれど納得いかない感じがしたのが残念です。
けど、死刑執行までのタイムリミットのなか謎を解き明かしていく様子はゾクゾクしました。
69/100
- 作者: 高野和明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/08/10
- メディア: 文庫
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