OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

椎名林檎「勝訴ストリップ」

すでに女として生まれた効能は発揮しているのだけど脱がせてほしい (椎名林檎詩「病床パブリック」)
 椎名林檎名義での2枚目のアルバム。2000年3月31日リリース。椎名林檎作品で一番売れた作品で、それだけに中古でもよく見るのだけれど、個人的にはすばらしいと思う。「無罪モラトリアム」は完璧なアルバムだけど、このアルバムには不完全ながらの良さがある。 
無罪モラトリアム」では「マゾヒスト」として自分を評価していた椎名林檎が「サディスト」と評価するようになったのは攻撃性の目覚めだ、何て物言いはこのアルバムリリース以降6年にわたってあちこちで言われていることだけれど、林檎がSかMかは別として、わりと被虐者からの視点がいつも付きまとっているのは事実だと思う。「虚言症」ではそんな被虐者を支えるような視点を持ち出し、けどそれに「虚言症」というタイトルをつけてしまうところに椎名林檎の一筋では行かなさをかんじるけど、これの終わりも余韻を楽しむ前に「浴室」のダンストラックに入ってしまうし。ほかに被虐者意識を感じるのは「ギブス」「闇に降る雨」「アイデンティティ」「罪と罰」「月に負け犬」「サカナ」「依存症」など。うがった見方をすればすべての曲に被虐者意識は感じられる。極端な言い方をすればロックってそもそも被虐者意識の強い音楽ともいえるし。
 このアルバムで感じたのは退廃感。デジロック、歌謡曲テクノポップ、ダンスミュージックなどさまざまな音楽からの影響を感じるけど、曲と曲のつなぎ目をテクノの方法よろしく見えづらくしていて、それゆえの一枚のアルバム通してのテーマがあって、それが「退廃」。だから、これが出された年の音楽シーンって、これを以降なんか何かが一度終わっちゃったような気がした。エレファントカシマシの「コールアンドレスポンス」も終末観感じるし。
89/100

勝訴ストリップ

勝訴ストリップ