OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

県庁の星

監督:西谷弘、脚本:佐藤信介、原作:桂望実『県庁の星』(小学館
キャスト:織田裕二柴咲コウ佐々木蔵之介和田聰宏紺野まひる奥貫薫井川比佐志益岡徹矢島健一山口紗弥加濱田岳ベンガル酒井和歌子石坂浩二

 遅まきながら観ました。身近な話題なので。
 粗筋は、頭でっかちな県庁職員・野村(織田裕二)はリゾート開発に携わっていた。リゾート開発を推進する一環として民間との交流企画と題し、スーパー『満天堂』で研修を行うが、そこはやる気のない職員と問題だらけの店舗という場所だった。教育係としてつけられたのがに二宮(柴咲コウ)だったが、そこでは野村の書類第一ノウハウは通じず、お荷物になってしまう、というもの。こんなことを考えた。
 まず、映画というのは決してメッセージを伝えるのに有益な手段ではない、確かに、一度に多くの人に見てもらえるというのはあるが、脚本家・演出家・役者とフィルターを通していくうちに本来伝えたかったものいうのは薄まってしまう。もし本当に何らかの問題について考えたいのなら論文や社説、新書を読むのがいい。
 では、この類の映画の役割はというと、ぼくは、きっかけなのだと思う。つまり、この映画を観て一人でも多くの人が行政の癒着や財政の問題点などを考えてくれて、自分で調べてくれたりすればいいのじゃないかということだ。
 それともうひとつ。これから書くことはどうしても誤解を招きそうだけど、読んでほしい。
 公務員に代表されるデスクワーカーと、肉体系労働者の間にはどうしても大きな溝がある。それは、ひとつはデスクワーカーは少なくとも肉体的には肉体的労働者に比べて楽な仕事をしているにもかかわらず、賃金に関してはデスクワーカーのほうが多いから。ひとつには、デスクワーカーには出世・昇給などの夢があるのに対し、肉体的労働者はたとえ同様の制度があってもどうしても天井が見えているからだ。したがって、肉体的労働者のデスクワーカーに対する反感は強くなる。
 エリート公務員の野村とダメ大学生のぼくを同列に置くようでおこがましいのだけれど、ぼくもバイトで肉体系の労働をしたことがあって、そのときにそういった業種の人とも話したのだけれど、どうしても分かり合えない感じがぬぐえなかった。何だか、根本的な考え方が違う感じがした。野村のように一生懸命がんばれば分かり合えたのだろうけど、そこはぼくの人間力がたりなかったのだろう。
 だから、もしかするとデスクワーカーと肉体的労働者が分かり合うのってそれこそ野村の提出したB案が採用されることくらい夢物語なのかもしれない。けど、この映画はその過程を本当に親切に描いてくれているのがいい。
 映画の話としては、まず織田裕二の演技。最初のつくり笑顔とスーパーでの研修を通して変わった後の笑顔が確かに違うんだよ。ここがすばらしいと思った。柴咲コウの演技はちょっと苦手かも。キツめの顔から同じような役柄をあてがわれることが多いけど、演技のパターンも少ない気がした。『満天堂』の人々は演技派が多いね。
 あと、全体的にドラマのような印象を受けた。よく映画の批判で「ドラマみたい」ってことをあげる人は多いけど、ぼくは別にそうは思わなくて、この原作に関してはドラマのように抑え気味の演出で作るのが正しいと思う。おそらくドラマだったらこの1.3倍はせりふが増えただろう。
77/100
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