OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

The Smiths「The Smiths」

 なんて甘美なアルバムだろう。
 いまやロック史に残るバンド、スミスのデビューアルバム。1984年リリース。
 スミスといえば、アコースティックなアレンジに線の細いモリッシーのボーカルで紡がれる社会的弱者の視点から描かれた詩と甘いメロディ、このアルバムの中にはそれから外れた曲は一切無いにもかかわらず、全然聞き飽きることが無いのはなぜだろう。
 その理由は、もう音楽的なことじゃなく聴き手がモリッシーの歌う「ぼく」に一体化しているからに他ならない。1980年代のマンチェスターでは失業者が増大しており、そのような状況下でスミスのようなサウンドは生まれたとされている。スミスの歌の中にはいつだって曇ったイギリスの空がある。就職戦線が激化を加え、ニートの増加している今の日本でこそまた違った響き方をするのかもしれない。
 だから、スミスを聴くと同時に背徳感がある。エコバニもそうなんだけど、微妙にうにうにした、絶対喧嘩弱そうなボーカルは競争力強くないぼくのようなある種の人間にはぴったり合うんだけれども、いつまでもこれを聴いてはいられないこともわかっている。モリッシーもイアンも、活躍当初はだいたい25歳くらい。社会人としては微妙な年齢だ。21歳の今だから違った聴こえ方をするのかもな、なんて、そんなことを考えた。
83/100

Smiths

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