戸川純「好き好き大好き」

　戸川純のソロ3枚目のアルバム。1986年リリース。ちょっとアイドル路線。
　アレンジはアイドルだけどそれに乗っかる歌詞の恐ろしさを忘れちゃいけない。ストーカーなんて言葉のなかった頃からストーカー的偏執恋愛を描いていた戸川純。すげー、すごすぎる。
　8曲すべてが佳曲で、アイドルアレンジがもっとも顕著な「屁理屈ボーイ」、ケイト。ブッシュみたいな「ANGEL BABY」、歌い上げる歌唱と強力な歌詞のコンボが最高な「さよならをおしえて」、テクノポップな「図形の恋」、歌唱法がまたしても演劇的な「オーロラB」、戦後の歌謡曲のようで、歌詞はちょい猟奇的な「恋のコリーダ」、そしてラストは最高にポップなぶりっ子ナンバー「遅咲きガール」。
　捨て曲はないんだけれど、けど、どっか物足りなさも残る、そんな一枚でもある。おそらくそれを埋めたのが次回作からのヤプーズだと思うのだけれど。
73/100

好き好き大好き(紙ジャケット仕様)