谷川流「涼宮ハルヒの退屈」
涼宮ハルヒシリーズの3冊目。連作短編集のようなもの。
SOS団のおかしな日常が描かれていて、確かに3冊目ともなるとキョンの語り口にも慣れてきて、多少のマンネリズムの感じるのだけれど、これで日常を十分に味わったからこそ4冊目が冴えるわけで、そういった意味で重要。
「笹の葉ラプソディ」は一冊使っても良かったんじゃなかろうか。確かに一冊使うと冗長になりかねない気はするけど、多少エピソードを追加したりして。
それでね、こうやってSOS団の日常を描かれると、この物語が高校を舞台にしなきゃならなかったという必然性がわかる。
この作品と「菫画報」(小原愼司 )は通底するテーマが同じような気がするんだけれど。つまり、非日常への憧れね。スミレにはたまたま超常的な能力が無くて、ハルヒにはあったっていう。ハルヒとスミレは、ただ細かいところで分かり合えない可能性があるけれど。
それで、そういった空想力の翼を羽ばたかせられるのは高校時代しかなくて、ハルヒとはその時期のマージナルな感覚が発揮された作品である。たとえば、SFやオカルトやミステリーは大学のサークルだろうが、社会人になってもネットとかあるし、楽しめるんだろうけど、日常がそれと同化するような感覚は、親に全面的に擁護してもらっている身であり、知識も身につけている高校時代がもっとも鋭くなるのだと思う。
そういった意味で個人的に今の時期に読むには多少痛々しいのも事実だけれど。
65/100
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/12
- メディア: 文庫
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