谷川流「涼宮ハルヒの消失」
涼宮ハルヒシリーズの4冊目。ファンの間でも最高傑作との呼び声も高い作品。
この作品、何気にハルヒの登場回数が少ないです。けれど、キョンの冒険譚としてかなり面白く読ませてくれます。
そうだね。たとえば、ドラえもんやクレヨンしんちゃんの映画にはよく、異世界からの使者が歴史の改ざんや世界の改変を狙って現れて、そいつらを撃退すべく主人公パーティーが戦うというパターンが見受けられる。この「消失」はそれの亜流と言ってよいものだ。
ただ、通例のそのパターンでは、それに失敗すると自分たちの住む世界がピンチになる(たとえば人間を食用とする魔物がのさばる世の中になるとか)ことが多い。また、それ以外にはたまたま主人公が仲良くなったキャラクターを救うというものもあるが、それだって主人公の立場を除けば上の条件に同じことだ。
「消失」がそれらの作品と大きく異なるのは、決してこの世界を変えなくたって主人公が明確な不利益を被らないことにある。これまでハルヒの行動に散々悪態を吐いてきたキョンにとっては、傍目から見ればむしろ利益かもしれない。
けれど、キョンは超常が日常となる世界を選んだ。その過程の描写がとにかく良い。
まだすべて読んだわけではないけれども、現時点で最高傑作。
それと、ハルヒシリーズって「猟奇的な彼女」の影響をかなり受けていないか。主人公の名前もそうだけれど、今回なんかは他の高校に乗り込むところが「猟奇的な彼女」の、「彼女」の高校にプロポーズしに行くシーンを連想させた。アニメのOPに映るピアノを弾くシーンもそれを連想させるし。
欠点は多少タイムスリップ理論が理解しにくく、それにこじつけっぽかったところかな。
84/100
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/07
- メディア: 文庫
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