OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

戸川純「玉姫様」

 戸川純のソロ1stアルバム。1984年発表。
 既にゲルニカでの活動を行っていた戸川純ですが、このアルバムでは現在でも根強くガールズポップにその影響の影を残す戸川のパブリックイメージが確立されています。
 とにかく、歌がうまいと思います。歌のうまさは決して声量だけじゃなく、音程、表現力などの総合として語られるべきであり、そういった意味で戸川純の曲により声色を使い分ける手法は素晴らしいの一言です。この手法って戸川純登場以前にはポップソングの範疇ではあまり用いられなかったし、戸川登場以降の20年でもメインにはなっていない手法ではあるけれど。
「踊れない」と「昆虫軍」「隣りの印度人」は今だったら確実に電波ソングの仲間入りでしょう、という歌詞です。「踊れない」ではロボットを演じてて、「昆虫軍」では虫のおねえさんを演じている印象がします。「隣りの印度人」の時折挿入されるオペラチックな歌い方も面白いです。
 アレンジとしては、切ったら血が出そうな電子音という表現がよくされるとおり、温かみを感じるシンセの音が特徴的です。あとは「諦念プシガンカ」のパーカッションは気持ちいいですね。
玉姫様」と「蛹化の女」ではどことなくイノセンスを感じさせる歌い方をしています。どこか蓮っ葉な「玉姫様」は女性の生理を題材にした曲で、歌詞に「座敷牢」「五色」など使われていることもあって、日本古来の情念的なものを感じさせます。
「蛹化の女」は、古文の「虫めずる姫」をモチーフにしていて、歌詞の内容は人を愛するあまり虫になってしまった女の歌といった感じなんですが、久々に聞いてみるとこの歌詞の解釈はこうですね。あまりにも人を愛してしまったばかりに自分の内面に自信がもてず、そんな状況を中身がどろどろな蛹に例えているといった具合なのでしょう。モテずのぼくにはよくこの気持ちがわかります。パッヘルベルのカノンに乗った美しい曲展開も見事です。
82/100

玉姫様(紙ジャケット仕様)

玉姫様(紙ジャケット仕様)

 雨になると聞きたくなるアルバムが5枚あって、これと、Sonic Youthの「aydream Nation」とBauhausの「暗闇の天使」とEcho&The Bunnymenの「Ocean Rain」と井上陽水の「断絶」。