OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

若杉公徳「デトロイト・メタル・シティ」

 ジェッツコミックを新刊で買うのなんて「愛人[AI-REN]」最終巻以来だ。
 今話題になっているこの漫画。
 内容は、インディーズシーンで人気のデスメタルバンド・デトロイト・メタル・シティ(以下DMC)、そのボーカル兼ギターのクラウザー?世、その素顔はオシャレなギターポップやフレンチを愛する23歳の青年・根岸宋一。彼が、素顔の彼と同じ趣味を持つ意中の女の子・相川さんの前で正体がばれそうになったりという具合に起こるコメディ。
 おそらく、この作者はどちらかというとギタポ派じゃなかろうか。渋谷系アーティストの固有名詞はカミヒ・カリイが出てくるにもかかわらず、ヘヴィメタ系の実在のバンド名は一切出てこないところとか。
 それにどこかヘヴィメタファンの描き方に多少悪意を感じる。いかにも餓鬼っぽく描いている。渋谷系が逆に理屈っぽい感じ。
 
 今までのこの日記の記述との矛盾を承知で描くが、ぼくは渋谷系の本物がわかっているという感じの聴き方も、ヘヴィメタの餓鬼っぽい聴き方も嫌い。じゃあどういう聴き方がいいのさなんて問われてもわからないし、これはこういう聴き方なんて指定できないだろうから、たのしけりゃいい。だから、なるべくこの日記では好きだと思ったものを取り上げて、そのジャンルが多岐にわたっているとなおよい、よくなるといい。
 
 閑話休題
 実際12話でのオシャレ系の人たちの描き方にも揶揄が入っているように思われるし、何気にこの作者はヘヴィメタと渋谷系という真逆なジャンルがどうすれば交錯するのか試行錯誤しているんじゃないのだろうか。そういったものを理屈で描き出してくれれば、音楽ファンとしてはこの上ない喜びなのだけれども。
 惜しむらくは絵があまり合ってないことと、あとDMCもきっとあの歌詞じゃ売れないと思うこと。おそらく伝説を一人歩きさせる売り方なんだろうなと思ったけれども、遠藤ミチロウさんの時代じゃあるまいし、インタ−ネットの発達した今伝説を商売にするのは難しいよなあ。ファンもあんなに従順な人ばかりじゃないだろうし。
 日本において、ヘヴィメタ関連人物で最も成功したのはおそらくデーモン小暮閣下、その次が大槻ケンヂあるいはX-JAPAN。X以外はヘヴィメタの持つ虚構性を芸人的手法でエンターテイメントにしていたと思う。ちなみにオシャレ系での成功者はスピッツフリッパーズギターになるだろう。こっちのほうが成功者の絶対数は多いと思われる。
 それだけに、ヘヴィメタという限られたサークルの中で弱者でありながら強者の振りをする根岸というキャラクターの今後が気になるわけだけれども。彼が今後どうなるかがヘヴィメタの明日を左右するといっても過言ではないのだ(過言だろ)。
64/100

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))