真島昌利「夏のぬけがら」
1989年にリリースされた当時ブルーハーツのギター*1、マーシーこと真島昌利の1stソロアルバム。スピッツの草野マサムネもお気に入りの一枚に上げていたことで有名。
当時のブルハのイメージとは異なり、日本人ならおそらく琴線に触れると思われる夏の情景が丁寧に描かれています。
一曲目の「夏が来て僕等」から最高。マーシーの声のおかげであまりその印象はないだろうけど、何気にボサノバアレンジが効いていて、清涼感があって、それに乗る歌詞も「花火ならいっぱい持ってる」「宿題は机で眠ってる」「誰かがピアノを弾いているよ」「誰もが秘密を持つ季節」と、夏の情景をこれだけ簡潔な言葉で言い表せるとは!と感嘆してしまう。
それに続く「クレヨン」の、自分の中にある不条理を見つめた歌詞も特徴。
マーシーは、2000年の時のハイロウズのツアーで、「夏は暑さの中に冷たさを隠し持っている」という意味の文章をパンフレットに寄せていた。それが端的に現れているのが、「タクシー会社の裏で夏は酔っ払ってた」(「オートバイ」真島昌利作詞)だと思う。
それに音楽的にも、当時すでにパンク界のカリスマになりつつあり、それゆえにパンクに殉死しそうだったブルーハーツ、それの息抜きとでもいうのか、リラックスしたムードの中にさまざまな音楽性が織り込まれていて、それがすべて夏のノスタルジアを表現するのに一役買っているというのが、すばらしい。ボサノバ、フォーク、レゲエ、ジャズ、サンバなど。
後半には、近藤真彦に提供した曲のセルフカバー「アンダルシアに憧れて」など名曲も多く、ラストを飾る友情をテーマにした歌詞の「ルーレット」はその中でも特に名曲だ。
友情をテーマにした歌詞は、あくまで過去形で語られやすい。3曲目の「さよならビリー・ザ・キッド」もそうだし。過ぎ去ったものを描くということには郷愁が付きまとう。そんな郷愁にお似合いの季節が夏かもしれない。ちょうどお盆もあるからね。
- アーティスト: 真島昌利
- 出版社/メーカー: トライエム
- 発売日: 1989/11/21
- メディア: CD
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