OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

エレファントカシマシ「明日に向かって走れ〜月夜の歌〜」

 エレカシの1997年リリースの9枚目のアルバム。
 この時期のエレカシはシングル「今宵の月のように」がドラマの主題歌*1に使われていたこともあり、エレカシ史上今までで一番売れたアルバムとなっている。*2
 エレカシというのは、季節感を大切にした叙情的な日本語ロックと、ハードロックに乗せてうだつのあがらない日常だったりバリバリの愛国思想だったりを文語的表現で叫ぶラジカルな面の二つがあるわけだが、これは前者。
 個人的に前者のエレカシのほうが好きなのだけど、これはそんな前者のエレカシの最高傑作だと思う。
 まずメロディがいい。日本人好きするメロディに、日本人好きする歌詞。「昔の侍」を聞くと秋の物悲しさをこれだけうまく表現できる人は彼のほかに曽我部恵一しかいないと断言できる。夏になると「今宵の月のように」を聞きたくなるし、冬は「明日に向かって走れ」だ。「赤い薔薇」の生活賛歌然としたところも、ダサくならないのがエレカシの良いところだ。
 エレカシの曲を魅力的にしているのは、加えていうなれば宮本浩次の声によるところも大きい。男の色気を感じさせつつ、日本的な美学を感じる、テクニック的にも高音が抜け良く出るという素晴らしい声で、もしもぼくが誰かの声に変われるなら宮本浩次の声を選ぶだろう。
 日本の心ここにありの名盤。

明日に向かって走れ ― 月夜の歌

明日に向かって走れ ― 月夜の歌

*1:「月の輝く夜だから」

*2:それから3年後の2000年には地上波の歌番組で「全員死刑です」と叫んだり(歌詞だが)、宮本の奇異なキャラクターがトーク番組で発揮されたり、ドラマに出演したりするわけだが