OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

「すいか」

スタッフ
チーフプロデューサー:梅原幹
プロデューサー:河野英裕
脚本:木皿泉(第7話のみ山田あかね)
演出:佐藤東弥/吉野洋/佐久間紀佳
音楽:金子隆博
主題歌:大塚愛「桃ノ花ビラ」(avex trax)
キャスト:小林聡美(早川基子)ともさかりえ(亀山絆) 市川実日子(芝本ゆか) 高橋克実間々田伝) 金子貴俊(野口響一) 小泉今日子(馬場万里子)片桐はいり(刑事役) もたいまさこ(バー「泥船」のママ) 白石加代子(早川梅子) 浅丘ルリ子(崎谷夏子)

 こんな、見終わった後ほっこりした気分になって、それでお腹が空いてきちゃうようなドラマは今まで観たことなかった。このドラマが低視聴率で終わったってのは、日本のドラマ視聴者の目はまだまだということなのかもしれない。「かもめ食堂」のヒットも考えると、なおさらそんなこと考えてしまう。本当に、事務所中心のPRの機会としてではなく、純粋に主張性やアート性を積み上げたようなドラマが観たいのに。
 2003年7月から9月にかけて、日本テレビ土曜21時枠で放映された連続ドラマ。
 あらすじ。主人公早川基子(小林聡美)は34歳。信用金庫に勤めるOL。34歳になった今でも親離れできていない。そんな中、親友で同期の馬場ちゃん(小泉今日子)が3億円を横領して逃亡する。その事件と並行するかのように、ゆかちゃん(市川実日子)が管理人を務める下宿「ハピネス三軒茶屋」にめぐり合う基子。変人の大学教授・崎谷夏子(浅丘ルリ子)やエロ漫画家の絆さん(ともさかりえ)などと出会い、彼女の人生は再び動き出した。
 観る前から地味だという風評はきいていたので、途中で退屈になったりしないだろうかと心配だったのだけれど、あっという間に10話全部見終わったしまった。1話終わるごとに外に水羊羹買いに行ったり、眠ったりして、1話1話じっくり味わって、けどあっという間だった。もっと観たい、そんな風に思ってしまった。
 この、レトロな雰囲気の「ハピネス三茶」に、住まなくてもいいから一日ただすごしていたいとか、そんな風に思わせる作品。
 この作品以降、小林聡美は迷いのある30代女性役が定番となりつつある。小林聡美の、絶世の美人というわけじゃないけど、決して性格がキツいわけじゃなく、かといって温和とも違う顔つきや声がそうさせているのだろうな。
 それで、この作品がスローライフをテーマにした作品で、もともとフィクションの登場人物って事件に身をゆだねるようなところがあって、それもある意味スローライフだと思っている。誰だって思ったことはあるだろう。こいつら真昼間から人探しして、仕事はどうしたんだ、とか。
 ところが、「すいか」の登場人物は決して仕事を投げ出しているわけでもない。ただ、ハピネス三茶の面々には前時代的な闇雲な上昇志向に毒された人間もいない。きっと間々田さんとか響一君とかもそうなんだと思う。ぼくは「木更津キャッツアイ」の世界観とかもスローライフのひとつのモデルケースに思えるのだけれども。スローライフは提唱するものではないが、大切なものを変わらず保ち続けることにあるんじゃないかと。
 そして、この作品を観て感じたことはこれだ。「自分探し」なんて言葉きらいだけど、要するに、こういうことだ。
 
 人は変われる、ゆっくりと



すいか DVD-BOX (4枚組)

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追記:「すいか」8話に、絆さんが絆さんにとっての「爆弾」(昔死に別れた双子の姉の持ち物)を埋めに行くシーンがあって、その「爆弾」の中に岡崎京子の「リバーズ・エッジ」があって少しうれしくなってしまった。そういえばゆかちゃんのキャラは岡崎作品の登場人物っぽい。