OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」

 秋山瑞人ライトノベル。2001年から2003年にかけて電撃hp上にて発表。全4巻。
 個人的には戦争モノって苦手なんです。それがなぜかって言うと、戦局が理解できないから。無論、現実の戦争がどうやって起こって、今どういう状態にあるのか、ってのを理解するのでさえ相当複雑なのに、フィクションの戦争なんてどうして理解できようか、そんな気持ちがあります。
 それに対する決着が、これかな。これでは、戦局を理解したいと願う主人公に対し、知ろうとすることの傲慢さ、を大人は教えている。
 あらすじは、夏休み最後の日に学校のプールに忍び込んだ主人公・浅羽はイリヤと名乗る女の子に出会う。その翌日、いつものように学校に登校した浅羽は転校してきた女の子・伊里野加奈に出会う。ここから話は始まって、変人部長率いる新聞部、主人公の幼馴染、謎の保健室の先生、など賑やかな登場人物を通して、歴然と主人公たちの間近にある戦争が明らかになっていく。けど100%じゃない。
 3巻の「水前寺応答せよ!」からの怒涛の展開はすごい。青臭い浅羽の主張と、それが現実の戦争の前でなすすべもなく打ち砕かれて、けど、それゆえに浮き彫りになってくる「伊里野を守りたい」という思い、の描写はすばらしいものがあって、けどこの辺の描写は前半での日常との対比ゆえにつらい。前半の、園原中学校を舞台にしたエピソードの数々のまぶしさも、伊里野の出す孤立した雰囲気や、鼻血によって不穏な空気は醸し出されていたわけだけれども。
 そして、後半に行くにしたがってそれまでの、各キャラそれぞれのエピソードが別々の場所で決着が着いていた形式から、浅羽と伊里野の二人の逃避行へと絞られて、そして、最後に地球の最後がこの二人の最後とリンクする、その過程は見事だと思う。「セカイ系」というらしいが。
 青春の瑞々しさと煩悶が紙一重だということに気づかせてくれる名作だと思う。ただ、いらない部分も多かったように思う。