村上春樹「風の歌を聴け」
この本をはじめて読んだのは高校のときだった。多分、正直に言ってあまり面白いとは思わなかったんじゃないかと思う。そのときにはすでに「ねじまき鳥クロニクル」や「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」などディープで複雑な村上春樹を読んでいたので、こういった雰囲気的な村上春樹の楽しみ方を知らなかったのかもしれない。
久々に読んだとき、前日にサークルのコンパがあって、友達と夜遅くまでしゃべってそのまま友達の家に泊まって、朝が来たけど家に帰る気がしなくて図書館に寄った。そして、なんとなく手にとった村上春樹全集の1巻のこの作品が、午前の図書館のけだるさと、22歳も終わりに差し掛かっている今の時期におけるそのときの気分とうまく組み合わさって、なぜだか不思議に幸福な気分になれた。友達とあけすけない話ができた幸福を引きずっていたこともあるのかもしれない。ただ、それを助長したのがこの小説だろう。ウディ・アレンの映画の一部で、観客に積極的に話しかけるものがあるけど、あれを見ていると不思議に幸せな気持ちになる。村上春樹もそうで、語り口の軽妙さがとにかく癖になるのだ。
波長が合うとは、つまりそういうことだ。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/15
- メディア: 文庫
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