OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

リリー・フランキー「ニホンのみなさんさようなら」

 リリー・フランキーの映画エッセイ集。
 僕は映画を観るときにこの本を参考にすることが多い。映画評論家ってどうしてああまで上から目線なのだろう。いろんなこと知ってますよ〜って知識をひけらかしたい欲がどうもちらほら見えるのだ。
 リリーさんは、多少斜に構えた目線から見つつも、すごく目線は低いような気がする。個人的にリリーさんは、浅野忠信村上淳と並ぶ日本で最もジゴロ役が似合う俳優(一応2本ほど映画出てるし)だと思う。「増量・誰も知らない名言集 (幻冬舎文庫)」を読むと本人はそこまで恋愛に関してはだらしなくないし、あくまで傍観者のスタンスを取っている気はするが、とにかく、普通の人の目線を持った人が、一般的な映画評論とは違った形で観る映画のエッセイだからこそ、信頼が置けるのだ。多分、「ポストマンブルース」を田口トモロヲに関して述べるだけで語る人は他にいないだろう。それに、着地点がしっかりしているから何よりも読みやすい。
 それに、この本が評論書としても確かな地位を持っていると思う根拠は、何気に日本映画を網羅しているからだ。黒澤明、成瀬などの巨匠に始まり、今村、大島などの鬼才はもちろん、若大将シリーズ石原プロ作品などのエンターテイメントも網羅しつつ、青山、黒沢清、河瀬などの若い才能まで取り込んでいる、強いて言えば、木下恵介市川準高橋伴明石井隆が抜け落ちている気がするが、それでもここまで偏りなく日本映画全般をとりあつかった書はないんじゃないかな。
 これを読めば日本映画の全体像はつかめる。もし僕が外国人向けの日本映画入門書を薦めるなら、これを英訳する。

日本のみなさんさようなら (文春文庫PLUS)

日本のみなさんさようなら (文春文庫PLUS)