死の棘
小栗康平監督。1990年公開。
この映画は怖い。松坂慶子が怖い。すべての台詞が怖いと思った。内容は、夫の浮気が原因で妻が発狂するといったものなのだけれども、肝腎の発狂するシーンなんて、どれほど怖いか・・・。
どこかで、棒読みというのはストーリーを存分に伝える力があるというようなことを聞いたのだけれど、ここで繰り広げられる岸辺一徳と松坂慶子の夫婦の棒読みは、その夫婦のギリギリの状態を表している。フィクションを強調するはずの棒読みが言葉を観るものにいやおうなく突き刺してくるんだ。ある意味、すごく暴力的な作品だ。
映像のほうも、別段変わったものを映しているわけでもないのに、すごく唐突な感じがした。全然違うのかもしれないけど、鈴木清順に近いものを感じた。
で、この映画がなぜ怖いかって、おそらく自分の内部にその恐怖の大元があるからなのだと思う。それは、ひとつは自分の秘密が他人にばれてしまう恐怖であるし、もうひとつは自分の中の嫉妬心が心を食い尽くしてしまう可能性に対する恐怖なのだと思う。
- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
- 発売日: 1996/03/20
- メディア: VHS
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