OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

アヒルと鴨のコインロッカー

(【注】一部ネタバレに繋がるためお気をつけてください)

 原作を読んだ直後に映画を観るという経験は別格だった。記憶に新しい魅力的な登場人物が実際の役者の体を借りて動き回っていたのだから。
 役者はどれもイメージに合っていた。松田龍平だけは少々齟齬があったか。でも「青い春」の頃の松田龍平ならかなりイメージに合っていたと思うのだが。
 濱田丘の頼りないままに物語に巻き込まれてしまうところ、原作では「悪魔を思い起こさせる」と評される容姿の瑛太、すらりとした体で凛とした印象を残す関めぐみ、そして、おそらくは「ノルウェイの森」のレイコさんがモデルとなったと思われるミステリアスな女性・麗子を演じる、少しくたびれた感じの大塚寧々。
 あと、この物語の根幹となるトリック。ああ、これは濱田の想像しているわけねというのがわかるようにモノクロで描いていたのは、ある意味正解、でもある意味不正解。ちょっと反則気味ではあるとおもう。カメラというのは他者性を持つものだから。ついでに言えばこのどんでん返しは、瑛太の演技をなんだあの棒読みと批判してやろうと思っていた意地悪な客に対しての痛快な返しにもなっている。
 それと、これは原作どおりなのだけれど、時折会話が現実から乖離していたのが残念。ボブ・ディランのCDがエンドレスで流れるラジカセをコインロッカーに閉じ込めるというのは相当青臭いと思うのだが、椎名(濱田)なりの決着のつけ方なのかもしれないが。
 特に良いと思ったのは、大学に入学したときの不安と期待が入り混じった感じがよく表現できていたなと思うこと。そうそう、東名阪ではない大学の周辺って割りと田舎で、学生アパートの周辺もあんな感じだよなあ、と椎名と手を握りたくなる。

アヒルと鴨のコインロッカー | 人生を変えるほどの切なさがここにある。