OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

月光の囁き

 喜国雅彦原作の漫画を塩田明彦が映画化したもの。1999年公開。出演は水橋研二、つぐみなど。
 ストーリーは、同じ剣道部に所属する日高拓也(水橋)と北原紗月(つぐみ)は互いに好意を持っていながらも一番仲のいい友人同士という感じだったが、ある日日高が友人に紗月へラブレターを渡すように頼まれたことがきっかけに交際するようになる。順調に交際を続けていたかに見えた2人だったが、日高は実は変態で、北原のソックスを盗んだり、トイレに行っているところを録音したりしていた。ある日、それが北原にバレてしまい、といったところ。
 たとえば、茫然自失とした日高が階段から落ちたり、自転車から転げ落ちたり、また日が沈んだ後の部屋で寝ていたりといったシーンの演出が巧い。確かに、高校時代の鬱々とした思いってこんな感じだ。
 それと、おそらくこの映画を見た後つぐみは女王様にしか見えなくなる。それくらい、つぐみの役は強烈だ。結構体当たりで挑んでいる。意外と胸がある。
 割と長回しのシーンが多く、そのシーンにおける登場人物の表情に心情を映している感じ。そして、ものすごいエロいとおもう。間接的なエロさだけど、キスシーンの音とか、襖越しに聞くかつての恋人と先輩とのセックスとか、フェティッシュだ。一般向けという感じはあまりしない。この監督がのちに「黄泉がえり」や「どろろ」を撮るのだからわからないというか。
 ぼくはこの原作の漫画が大好きで、ベスト10には入ると思っています。それだけれども、この漫画は結局のところ、キクニさんのいつもの4コマのように
(1コマ目)日高「好きだよ。紗月ちゃん」紗月「私もよ。日高くん」
(2コマ目)女「きゃあ、何してるの!?日高くん」男(紗月のパンティーをあさりながら)「さ、紗月ちゃん」
(3コマ目)男「実は僕、変態なんだ」女「日高くん・・・」
(4コマ目)女「実は私もなの・・・」男「なあんだ。よかった」
 こんな感じだと思うんですよ。だから、シリアスなキクニさんと言ってもファンから見れば作品間における齟齬みたいなのは感じられなかったと思うんです。自身の持つフェティシズム谷崎潤一郎からの影響をギャグでコーティングせずに出したものという印象で。
 けど、この映画の最大の改悪は、オチを変えてしまったことにあると思います。奇麗にまとめちゃっているけど、それじゃキクニじゃないんです。より一般向けかもしれないし、スピッツの主題歌ともあうのかも知れに空けれど、そんなさわやかな終わり方じゃ納得しないんですよ。
 多分、この映画を観た人の一部は、むしろ変態なのはつぐみ演じる北原じゃないかと思うのではないのだろうか。それを一身に受けて解決するのが原作のオチだけにね。

月光の囁き ディレクターズカット版 [DVD]

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