OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

The Kinks「Ultimate Collection」

 イギリスの長寿ロックバンド・キンクスのベストアルバム。2枚組で44曲。初めて聴きました。
 キンクスって、たとえばビートルズなら「アビー・ロード」!、フーなら「マイ・ジェネレーション」!みたいなアルバムが存在し無いような気がします。それは決して彼らのアルバムが上記2バンドに比べて劣っているというわけでは、多分ないんじゃないかな?おそらくはキンクスの音楽に対する姿勢が、微妙に若いロックファンの哲学に沿わない部分があるのだと思います。それにビートルズやフーならアルバム数もそんなに多くないから全部聴けるし、ストーンズならある時期までをチェックしておけばOKみたいな風潮がある。けど、キンクスってどっから聴いていいかわかりにくいんですよね。
 キンクスの音楽はロックというよりポップよりだと思うんですよね。ぼくにとってキンクスの音楽は、他のどのバンドよりも「イギリス」を感じさせます。聴いているだけでユニオンジャックが浮かんでくる。
 このアルバムが製作順に曲が並んでいるのかどうかはわからないのですが、だんだんボーカルスタイルが老成してくる、というか完全に老人みたいな声になってきているのが印象的です。それがファニーです。
 キンクスの音楽には、そして、ユーモアがあります。きっとロックの偉人とされる人たちがひたすらロックの先進性を命題にしていたのを横目にキンクスはあくまでポップを自分たちの創造を積み立てる場として利用してきたのでしょう。「Superman」の、後にくるりの「ワールズエンド・スーパーノヴァ」にも繋がるようなダンスミュージック風味、「Dandy」のはねるようなメロディ、「Dead End Street」なんかはもしかするとOASISの「The Importance Of Being Idle」の元ネタなんて思わせる暗いイギリスの街並みが思い浮かぶマイナー調の曲、「A Well Respected Man」の美メロ、「You Really Got Me」のヘヴィメタの元祖とも言われるアホみたいな早弾き、「Better Things」の印象的なピアノのイントロと、一瞬The Doorsの「Hello I Love You」?って思うような親しみやすいメロディ、「Autumn Almanac」のアコースティックな演奏がかもし出す可愛さ、「Cellloid Hero」は静かに盛り上がる。タイトルやかすかに聞き取れた歌詞から考えるに、少年の頃あこがれていたヒーローの唄?そして、「Come Dancing」に至ってはオープニングのスチールドラムに象徴される夏を思い起こさせるナンバー、あと、「Don't Forget TO Dance」という曲はタイトルに似合わず夕暮れの似合う静かな盛り上がりを見せるナンバーなのだけれども、キンクスって「踊る」ということにきっと思い入れがあるのだろう。
 ベストだからかもしれないけれど、捨て曲がないし、それに、一部の曲を除いて古さみたいなのを全く感じなかったです。とりあえずは、向こう数年、キンクスのオリジナルアルバムをこれを手がかりに聞いてみるとしますか。

Ultimate Collection

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