OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

夕凪の街、桜の国

 佐々部清監督、こうの史代の漫画を原作にしたもの。主演は田中麗奈麻生久美子
 前半は麻生久美子を主演に置いた、戦後12年が経過したまだ傷跡が残る広島の街を舞台にした物語。特に目新しいことのない物語なので演技に注目がいきます。
 藤村志保は見事。麻生久美子は、ちょっと不自然な感じを受けた。でも、このけなげさが伝わってくる感じはよかったと思う。あとこれはキャスティングの問題だが、なんだか田中麗奈麻生久美子ってどう考えても血が繋がっているようには見えない。これが宮崎あおいなら納得なのだが。
 後半は主演の田中麗奈の視点から見た、現代における広島に投下された原爆の影響を探る話。麻生の弟に当たる堺正章の行動を女友達(中越典子)と追う、という展開は結構いいなと思った。ただ、あちこちにご都合主義の脚本が見られるのが欠点だけど。
 あー、こういう作品を評すると、普通の映画の批評ってあまり行ってはいけないような気がするのだよな。冷たい人間と思われそうで。
 おそらくは賛否両論となる、麻生たちが生きていた時代の回想に田中が入り込むシーン。ぼくはあれは必要だったと思う。その時代の人間の誇りというものが継承され行く様子を、もし表情だけで表せたらもっとよかったかもしれない。だけど、そんな技術はなかったからああなった。でも、あのシーンがあったから、ようやく2時間掛けて、原爆の痛みがわかりやすく現代へと変換されたのだと思う。
 田中麗奈は「がんばっていきまっしょい」でしか演技を見たことがなかったのだけれども、どこか動じない雰囲気を持つ、凛とした女性が似合う人だと思う。もしかすると小林聡美みたいな女優に成長するかもしれないなと思った。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

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