OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

街のあかり 

 フィンランドの監督アキ・カウリスマキの2006年作。「敗者三部作」最終章となる作品。
 ストーリーは、警備員をしているコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)は、ある日偶然に出会った女性ミルヤ(マリア・ヤンヴェンヘルミ)に恋をするが、実は彼女はマフィアの情婦で、彼はマフィアに利用され警備しているビルのセキュリティを開け、共犯という形で刑務所に入ってしまう。
 まあ、コイスティネンの場合は自業自得なわけで、けど突き放して観れないのは、寡黙なくせに口を開けば待った区を持って現実性のないことしか言えない彼にぞっとするほどのリアリズムを感じるからだろうな。彼にひそかに思いを抱いているソーセージ屋の売り子アイラ(マリア・ヘイスカネン)はなぜか邪険に扱ってしまうし。てか、この映画の中で一番魅力的なのはアイラだな。
 最初は淡々と進みすぎていて、あまりスクリーンに集中できなかった。とはいえ、この映画は明らかにストーリーが主役で、それを引き立てる材料として、登場人物のキャラ立ちがあるのだと思う。特に、コイスティネン役のヤンネ・フーティアイネン。割と男前の印象は受けるが、あまりにもカメラ目線過ぎて「こっち見んな」と思ってしまい、その辺がやけに彼の社会不適合性を感じさせてしまった。
 そんな彼に複雑な感情を抱き始めるとあれよあれよという間に彼は宝石屋強奪の片棒を担がされ刑務所に入ってしまう。そして出所して料理屋で働き始めたはいいが、言葉の端々からは怪しい商売を始めようという感じがして不安はぬぐえない。そして彼は、偶々店に入ってきたマフィアたちのせいで、やっと手にした職まで失ってしまう。彼はここで初めて怒りらしいものを見せバターナイフでマフィアたちを刺そうとするが、あえなく返り討ちに合い、襤褸切れのように捨てられる。
 この流れが秀逸だ。本当に、マフィアにとって彼の人生なんて本来どうでも言いわけでしょ。裁判でもミルヤのことは一言も話さなかったわけだし。しかし、このマフィアは血も涙もないというか。本当に蟻でもつぶすかのような感じで、彼の人生を終わらせている。この、ここになんとも言えない悲しさを感じるねえ。
 そしてラストでアイラの腕の中で「ここじゃ死ねない」というコイスティネンの姿に、最後になってようやく一筋の希望を感じるわけだけれども、想像すればわかるとおり前途はぜんぜん明るくない。
 この手の映画は殆ど見たことなくて、ロメールの映画を1回見たくらい。ましてやフィンラドなんて初めてだけれども、来年、今住んでいる土地を離れたらこの手の映画を劇場で見ることはなくなるだろうと思って観た。かなりの収穫だったと思う。
 ただ、これを見た映画館があまりにも売り子の態度が悪すぎた。あの映画館には二度と行きたくない。