OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

「めがね」

 荻上直子監督の映画。出演は、小林聡美もたいまさこ光石研市川実日子加瀬亮
 きっと、バリバリ仕事をこなす上昇志向の塊のようなエリートサラリーマンの人は受け付けない映画だと思う。ぼくは上昇志向だの競争意識だのを欠いた、「あー、こんな世界で暮らしてえなあ」なんて思うダメ人間なので、直球ストライクではまったわけだが。
 途中、薬師丸ひろ子演じる、ちょいカルトなロハス生活をやっている人が出てくるわけだけれども、正直、もたいさんや光石さんの生活、およびこの映画の存在に少々宗教色を感じたのは事実。
 ここでちょっと考えたのが、水木しげるさんが言っていたことなのだけれども、「若いうちは働かなきゃダメだけれども、40を過ぎたら適度に怠ける癖をつけたほうがいい」というようなもの。小林聡美は確か今年で41歳だっけ。このメンバーでは、市川と加瀬以外はみんな40以上だったと思う。中国の五行思想で言えば「白秋」に差し掛かっている時期で、人生の「黄昏」にあたるのだろう。若い市川にとんがったところが残っていたり、加瀬があっさりと旅を終える決意をしたところにそれが現れていると思う。もたいはもう「玄冬」になるのかもしれないけど。
 それと、これは「かもめ食堂」で感じて、ここで確信になったことだが、この監督さんは夜を殆ど描かない。ワンシーンだけ出てくるが、すごく独特な撮り方をしている。それ以外は、釣りをしたり、オセロをしたり、かき氷を食べたり、食事をしたりということを太陽の下で行っている。それだけで、事件らしい事件も描かず、ついでに言えば小林の正体も殆ど描かず、の109分間。
 この映画を受け入れられるかどうかで社会の成熟度がわかるとか言いたいけれど、でも、全員がこういったスローライフをやったら社会の生産性がなくなってしまうのだよなあ。中毒性に注意したほうがいい、麻薬のような作品。実はすごく危険な作品なのかもしれない。


 

映画「めがね」オリジナル・サウンドトラック

映画「めがね」オリジナル・サウンドトラック