I'm sorry, mama/桐野夏生
最近話題になっている結婚詐欺連続不審死事件。
この事件を聞いて真っ先に思い浮かんだのがこの小説だった。
この小説の主人公の女性は、自らの手段のためなら人を殺すことも厭わない。そもそも善悪の概念すら私たちのそれとは大きく異なっている。
また、外見は男性風で一見気風のよさそうに見えるというふうに描写されており、決して美貌をもったタイプではないことも重なる。
そのような性格を形成されるには娼館で生まれ育ったなどそれなりの環境もあるのだけれど、それを差し引いても同情の余地はひとかけらも見当たらない、真の悪党。
人間社会における悪意を集めた存在である主人公。彼女の姿を見て、何を思い何を感じればよいか、この小説を読んだ時の私にはわからなかったし、今もわからない。ただ、どす黒い読後感だけが残った。
けれども、本来理解できないはずのサイコパスの心理を描き切った桐野夏生さんの手法は素晴らしい。
簡単には触れることのできない、悪意100パーセントの世界。読むなら覚悟の上で。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/11
- メディア: 単行本
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