OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

SR サイタマノラッパー('09/入江悠)

 埼玉の田舎町でくすぶりながらラッパーをやっている主人公たちが、元AV女優の高校の同級生に会ったこときっかけでバラバラになる。

 田舎でくすぶっている若者の群像劇というと「木更津キャッツアイ」が真っ先に思いつくけれど、この映画にはそんな爽快感はない。
 HIPHOPに対し、相当マッチョなイメージを持っていたため、それが逆に新鮮だった。
 おそらく、十年前にこの映画が作られたら「サイタマノパンクス」になっていたと思う。
 しかし、HIPHOPを題材にした「サイタマノラッパー」も、無為な生活を送る青年が語るべき言葉を得るまでをまるでドキュメンタリーのように描いていて、面白かった。

 群像劇かと思いきや、思いのほか視点はイックとトムに絞られている。
 だからこそ、彼らが居場所を失くして行く感じとか、ちょっとしたきっかけで彼らを取り巻く問題とかが噴出していく感じがリアルだった。

 好きだったシーンは、イックが元同級生の小暮千夏(みひろ)に別れ際自分たちのラップのCDを渡すシーン。
 イックにとってヒップホップがすべてだけどそれが千夏に伝わっているわけじゃない。けれど、最後の千夏の笑顔を観ると、100パーセントとは言わないまでも少しは伝わったんじゃないかなという気になる。

 各所で話題の焼肉屋でのラップシーンもよかった。
 観てるほうが気まずくなるんだけど、救いがあるようで、実はその救いは新たな絶望のはじまりなのかもしれない、けれど・・・。

SR サイタマノラッパー [DVD]

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