斜陽/太宰治
太宰治の代表作。
久々に読む。
人は恋と革命のために生まれてきた、か・・・。
日本では民衆革命によって社会が動くということが(少なくとも欧州に比べては)なかった。
だからかどうかは知らないけれど、日本人にはある種の諦念が根付いている。
それは、私たちの生活に大きな変化は期待できないから、劇的なことなど起こるはずもない、ということ。
その諦念は高度経済成長以降、日本人が裕福になってしまってからさらに強固なものになっているのかもしれない。
その意識を1947年の時点で汲み取っていた太宰は素晴らしいと思う。
さて、裕福で世間知らずな人に限ってちょっとしたことで道を踏み外すことは多い。そして、そのきっかけになるものが恋であることも多い。
なぜそうなるかというと、恋が非日常的なことだからかもしれない。
実際に平凡な日常を送っていると、日常で劇的なことなんて恋愛しかないんじゃないかとは、思う。
この物語は基本、没落貴族のかず子視点で描かれている。
もちろん、作者が貴族ゆえの考えの甘さとか、そういったものを強調しようと書いているのかなと感じることもあったけれど、基本的に貴族のお嬢様ってこういうモノの考え方をしてこういう文章を書くんじゃないのかなという感じがした。
没落したとはいえ裕福で、なまじっかもともと裕福であった故に汗水たらしてお金を稼ぐという意識に乏しくて、それゆえに退屈している元貴族。
母は貴族としてのロマンチシズムの象徴のように存在し続け、
弟はその状況を振り切ろうと麻薬に手を染め、
そしてかず子は恋にすがる。
徐々に崩壊していく彼らの姿に、不思議な美しさを感じた。
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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