人情紙風船('37/山中貞雄)
いわゆる貧乏長屋を舞台にした戦前の映画なんだけど、簡単に一言で言いきれないような何かがある作品。
詳しく調べたわけじゃないけれど、この時代ってもっと善悪がはっきりしていたはず。なんせこれから太平洋戦争に向かおうという時代なんだから。
けれど、この映画では善悪がはっきりしていない。正確にいえば、一人の人間の中に善も悪も、本人が善と認識していない善も、本人が悪と認識していない悪もあって、それが様々なタイミングで絡み合って、あの哀愁漂うラストへとなだれ込んでいく。
僕はこの映画を一回は福岡にいた時に「シネラ」という図書館の中にあるミニシアターで、一回は沖縄の桜坂劇場で観たのだけれど、2回目に観たときのほうが明らかに印象に残った。
全体的にユーモアが溢れていて、笑えるシーンも多いのだけれど、あの祝宴を機にすべてが変わってしまう、その落差が観客に残すものは大きい。
一度は見てほしい映画。
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