at the BLACK HOLE/YOSHII LOVINSON

Release 2004.2.11

　イエローモンキーのボーカル吉井和哉がYOSHII LOVINSON名義で出したソロデビューアルバム。
　あちこちで言われていることだけど、とにかく暗い。リードトラックとなったナンバーM-2「TALI」ではまだ想定内だったかもしれないけれど、このアルバムの実質的ラスト曲「SWEET CANDY RAIN」の暗さといったらハンパない。ただ、「救いだった神にすらもう　Say Goodbye」という最も絶望的な歌詞を最も耳につきやすい部分に置いているところ、あくまでもこの暗さはギミックなのかなとも思わせる（M-4「Sade Joplin」M-6「Fallin' Fallin'」M-8「Black Cock's Horse」に見られるマイナー調のサビ運びなに顕著だ）。
　そもそも、吉井和哉という男はイエモン時代から声に暗さをまとっていた男だった。同性愛者の悲しみを歌謡曲のメロディーとグラムロックな演奏に乗せて歌うといった芸当を見せていたが、彼の表現するマイノリティーの悲哀は、それくらいのギミックをもってようやく中和されるレベルだった（別に彼がゲイだと言っているわけではありません）。
　きっとイエモンが解散していなくてもこのような作品になったのではないかと思う。彼自身の苦悩（それはイエモンという巨大なバンドに関することでもあり、おそらくは自身の年齢に関するところも大きかったのだろう）を最も適した表現でリリースしただろう。個人的には、イエモン時代を含めて最も完成度の高い作品ではないかと思う。

★★★★★★★★★☆