OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

十三人の刺客(★★★★☆)

 同じ日に「インシテミル」を観たせいでこの日観た映画の中で死んだ人数がとんでもないことになってるわけですがw
 1963年に池宮彰一郎の小説を工藤栄一監督の手で映画化された作品の、「ヤッターマン」などで知られる三池崇史監督によるリメイク、らしいですが元の作品は見ていません。

 いやー、面白かったー。今の時代珍しい真っ当な時代劇だと思います。

 役所広司演じる島田率いる刺客集団、対するは稲垣吾朗演じる暴君・松平斉韶とそれに仕える鬼頭(市村正親)率いる明石藩軍団。
 序盤の暴君っぷりを示すエピソードの数々や、「七人の侍」よろしく仲間が結集していく流れ。中盤の知能戦とも言ってもよい展開。そして終盤の50分以上あるにもかかわらずだれさせない、ある意味「七人の侍」を超えたかもしれない(?)と言ってもいい合戦は長尺の映画ということを感じさせないくらいハラハラさせてくれました。

 刺客集団にせよ、明石藩にせよ、片や万民のため、片や(それがどんな暴君であれ)主君のため、という違いはあれど、武士道という妄疾にとらわれているのには違いなく、それは江戸末期という、サムライが形骸化してしまった時代においては、まるでドン・キホーテのように映るわけです。それが凝縮されたのが、稲垣吾朗演じる暴君の終盤におけるあのセリフにつながります(観れば絶対わかると思います)。
 この映画は一面的な見方をするとどうしても刺客側に肩入れしてしまうそうになるのですが、その中和剤として一番最後に刺客側に加わる山の民・木賀小弥太(伊勢谷友介)が本来はどちらにも属しない存在として異彩を放っています。

 だから生き残ったもののことを考えると、果たして武士道とは何だったのかと考えさせられてしまい、決して観たものをすぐには解放しない映画だと思います。

 ただ岸部一徳のあれだけはなー。