ボーイズ・オン・ザ・ラン('10/三浦大輔)
2011/2/26鑑賞
DVD
原作既読。峯田さん好きだけど公開当時は観に行く気がしなかった作品をDVDにて鑑賞。
まず、初めは原作漫画の「一生懸命な人をバカにしている感じ」及び「女性に対する露悪的な嫌悪描写」が苦手だった。
けれども、この映画ではそれが薄まっている、というよりも、必然性あってそれらを描いていると感じた。
きっと、公開当時(2010年5月)に観に行っていたら自分の中では消化できなかったに違いない。
言うなれば、この、主人公田西の病理の処方箋は「恋愛主義からの脱却」である。
つまり、田西は確かに一生懸命ではあるけれどその一生懸命さが空回りしているわけで、それがなぜかっていうと実は彼は徹頭徹尾自分の事しか考えていないわけだ。
今にしてみれば、一生懸命である意味誠実な男であることと、女性にとって魅力的な男とは違うなんてのは分かる。
余談だけれども、この映画内にはマーティン・スコセッシの映画『タクシー・ドライバー』が重要な役割を持ち、田西の髪型を観ればわかるようにオマージュが捧げられている。『タクシー・ドライバー』の脚本家ポール・シュナイダーについて、彼の監督作『キャット・ウーマン』に出演したナスターシャ・キンスキーはこう言っている。「わたしはすぐ監督と寝ちゃうくせがあるのだけれど、彼とは寝る気がしなかったわ」
つまり、この作品のテーマは、一生懸命さなんて、この世界は必要としているのか、あるいは、その一生懸命さは、単なる自己満足じゃないのかという、極めて誠実な問いかけがなされている。
身も蓋もなくリアルで、個人的には最大限の鬱展開。揺さぶりをかけるジョーカーは松田龍平演じる青山。
原作で感じた女性に対する嫌悪感も、まあ、後半に行くにしたがってひどくなっていく傾向はあるけれど、必然性あって描いているのだと実感した。
例えば、初めてホテル一緒に行った時に、口では否定していたけど本当はセックスしたかったこと
獣姦は許せても、友人のソープ嬢の部屋にいることは許せないこと。
けれども、青山にあれだけ弄ばれても許してしまうこと。
それがなんだかリアルで、いわゆる恋愛格差をここまで象徴的に描いたものはないと思った。
自己矛盾や欺瞞も抱えているけど、それも含めてちはるで、いや女性で、それらもすべておまえら男は受け入れられるのか、という命題がそこにはある。
個人的には、「じゃあ、どうすればいいのさ」ってところまで描いていてくれるとよかった。
原作だって、そこには答え出せていないだけに。
その分、結局わかりあえなかったんだろうなという余韻を残しつつも気持ちがいいラストは、救いでありつつも思考停止なのかもしれない。
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- 発売日: 2010/09/22
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