OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

漫才ギャング(★★★☆☆)

2011/4/2鑑賞
@シネマQ



 ヤンキーもの作品は、サービス精神旺盛であるがゆえに、やはり作品としては(芸術的価値とはまた別のところで)面白いものになっているものが多いと感じた。

   
 品川ヒロシの映画で最も気になるのは、副業監督の作品にしてはあまり「私」が見られない。たとえば松本人志の映画には、明確な彼の「私」が感じられ、そのことが映画的完成度を下げているきらいはあるものの、ある種の作家性となっている。品川さんにはそれがない。
 ただ、この映画の主人公の才能を周りがほめたたえるシーンがあるが、あそこはやはり品川の巨大な自意識を感じてしまった。
 取り立て屋の元漫才師が「売れるには努力だけでも足りない。何かが必要だ。」というシーンがあるけれど、これを売れている芸人の品川が言うのはちょっとねえ。
 映画を最後まで見ても、じゃあ、売れる前にくすぶっていたころと現在とで何が具体的に変わったのか、ってのはわからないし。
 珍しくすでにメジャーである程度評価を得ている漫才師を主人公にしたんだから、ここ掘り下げて書いて欲しかったな。


 あとは、千鳥の大悟が強いという必然性がわからない、とか

 あれだけの暴力受けたら内臓破裂とかになってもおかしくないのに普通に次のシーンで漫才しているのはどうなのか、とか
 新井浩文の演技に対して暴力の結果がついていってない(あの人、本気で殺しそうなほど冷たい演技するよね)、とか
 あれだけ上下関係について説いてた佐藤隆太が先輩にあいさつしないのは不自然(というかあのシーンだけキャラが違う)、とか
 それゆえに後半「変わった」って言われてもよくわからない、とか
 そもそも名言をドヤ顔で言っている感じがいけすかない、とかあるけれど。



 たださ、俺テレビで『ドロップ』を流し観していて、一個だけすごく印象に残ったシーンがあって
 主人公が彼女(?)に電話で新しく知り合ったヤンキーの友達について語る場面で、そこはなんか新しい環境への期待が溢れている感じが出ていてよかった。
 そもそも品川は話術でのし上がってきた人なわけだから、会話シーンは結構うまいと思う。
 特に男子校的トークがね。
 飲んでいて、盛り上がりがひと段落したところでクサいセリフを言うあの感じまで織り込み済みだと思う。
 ついでにいえば、お笑いについてもっと掘り下げて書いて欲しかったというのも、留置所でツッコミのテクニックを解説するシーンに善いものを感じたからだし。



 だから本来品川はもっと男くさい、女性なんて一人も出てこないような作品を作るべきと思うのに、これは商業に合わせた結果だろうね。