OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

手塚治虫のブッダ ―赤い砂漠よ、美しく!―(★★☆☆☆)


2011/6/12鑑賞

@サザンプレックス

 

 原作未読。歴史を題材にした話だからかもしれないけれど、やっぱりちょっと切り処がよくない気がした。

 

 まず感じたのは、このお話は幾分奇妙な構造をとっていること。


 チャプラという成りあがる戦士に関するエピソードに相当の尺がとられている。

 
 彼のドラマって、実はこれをシッダールタの物語と考えると、あまり関わって来ないんだよね。
 一回対面して、「なんだ?このパワーは?」みたいなセリフを言うシーンだけで。

 ただ、僕としてはシッダールタが王族と言う安全な身分から奴隷解放を願う欺瞞と対照的なかたちで描かれている点で、意味はあるかと思いました。


 シッダールタの幼少期がオカマくさいとか(ちょっとプリキュアのほのかに似ていた)
 当時は勿論戦乱の世の中で、こんな哲学的なことを考えているなんて、貴族さんは悠長なことですねえなんて、嫌味も言いたくなると思いますよ。
 ちょっと旧エヴァのシンジくん的な悩みですよね。



 前述のチャプラに絡むエピソードでも、何その上から目線と言いたくなる気持ちもわかりますよ。



 この物語って、男性主義的な考え方を持つパンダカ(藤原啓治)や、成りあがりを目的とする権力志向のチャプラが死んでいることで、一見するとおぼっちゃまの自分探しを最上に置いているように、見えるんですね。

 でも、僕が思うに、今だって戦乱は絶えないけれど、それでも少しばかりゆとりのある生活を手にすることが出来ているのは、シッダールタのようなひとがいたからではないかと思うのです。

 むしろ自分は、どんなに甘い考えと言われようと、競争主義や男性主義を離れたところに新しい価値観を創造したのは意味のあることだと思いますよ。



 むろん、宗教ができたことによって新たな戦火を生んだという点は、今後堀りさげていくべき点と思いますが。

ストーリーとしては、前述のちぐはぐさだったり、やはりアニメ技術が進んだ今この程度では満足できないなというのもあるけれど。ただ、個人的にはこの前時代的な感じも嫌いではないです

 あとは、ちょっとだけ能登さんの声が聞けてよかったり。


 ああ、そうそう。明らかにダメだったシーン思い出した。

 チャプラが「タッタのかたき」とか言うシーンあるけど、タッタさん生きてるよね?完全にギャグ。
 それ以外にも、デビルマン並にわすか数分の間に逆の事を言っているセリフが多かった気がする。
 チャプラらの母が10年後も若過ぎて、処刑シーンにはちょっと危ないものを感じた。



 えーっと、声優さんの演技は全体的に素晴らしいと思いました。特にナラダッタ演じる櫻井孝弘さんの獣化シーンなど。