プリンセス・トヨトミ(★☆☆☆☆)
最近思うんだが、駄作であっても数をこなしてきているせいか、「ここをこう変えれば面白いのに」と頭の中で改変することができるようになってきてから、駄作を楽しむ余裕が出てきたように思う。
しかし、この映画に関しては腹が立って仕方なかった。
まずさ、会計検査院の3人。誰に感情移入すればいいの?
やはり主役の堤真一?
たださ、彼は実はある秘密を抱えていて、それは物語終盤まで明らかにされないの。
で、生意気な部下である岡田将生は論外でしょ。
だから、必然的に綾瀬はるかが観客の代わりに目となって物語を進めていかなくてはならないはず。
しかし、綾瀬はるかは物語の中心にほとんど絡んでこないわけ!
そもそも彼女、ミラクル鳥居は奇跡を起こすともっぱらの評判だ、というわりには全然奇跡を起こさない。
最後の最後でゲーンスブールから「堤さん、なんで綾瀬さんと組んでるんです?」って言われている時点で
ダメでしょうが!
つまりこの時点で、観客はこの物語を誰の視点で観ていいかわからないため、興味を失ってしまうわけです。
あと、予告編で流れている人がいなくなった大阪の街。
陰謀論めいたお話、みなさんお好きですよね。
けれどもさ、そこに出くわすの、なんと綾瀬一人。
ほとんどの人は別の場所に集まっていて、物語の中心となる会談を進めているわけです。
後半になって物語は、
堤パート・・・大阪国のあらましと、堤自身の幼少期の思い出、及び大阪国の伝統を継承できなかった者VS大阪国の伝統を守りたい者
綾瀬パート・・・いじめられていた女装男子と、彼を庇う志田未来(実は豊臣家の末裔の姫、しかし本人は知らない)、と彼女を拉致した綾瀬
と二分するわけだけど、
まず、この2つのお話の関わりがイマイチ薄くて、つかみきれないわけね。
綾瀬パートの影響が堤パートにあるのなら、岡田が手をまわした事って大して意味なくね?ていうか偶然に頼り過ぎ?
ってか、もしその影響があるなら、大阪国民が暴動くらい起こしててもおかしくないし・・・。
で、堤パートが綾瀬パートに与える影響を考えると、別に全員があの場にいるわけじゃないんだから、誰かが自警的に綾瀬をつかまえてもおかしくね?ってなる。
そもそもさ、あそこである条件の男たちが集まっているわけだけども、別に集まってどうするってわけでもないし、これもおかしくて、集まった目的って、志田未来を守るためでしょ。
だったらなぜみんな探さないの?
この伝統って男たちには父親から伝えられるわけだけれども、女たちにはどう伝えられるの?
今日び、「女は家庭を守るもの」っていう考え方は危ないよ。
あとさ、あの日大阪にいた私人とかはどうしてるの?
まだ親が亡くなってない若者の男とかもどこにいるの?
とか、ツッコミどころ多過ぎてわけわからなくなる。
僕は「落語物語」を観て、今年はこれ以上ひどい映画は現れないなと思ったわけです。
けれども、あちらは映画の事をよくわかっていない落語家が撮ったわけで、或る意味、映画の枠を飛び越えたものをスクリーンで経験するという、なかなかトリップ的といってもいいかもしれないものがあったわけです。
けれどさ、こちらは映画の経験が少なからずある方が撮ったわけでしょ。
ちょっと悪質だよ。これ。
あと、なんかカメラワークが気持ち悪くなるスピードだった。
あそこもうちょっとゆっくり動かしてもいいのに。
かと思うとむだなところでスローモーションかけるし。
ツッコミどころが多くて、しかもそれが明らかに物語の推進力をそいでいるかたちとなっている。
サスペンスの要素も少ないからね。緊張が持続しない。
赤くなる大阪城のCGもちゃちくていやだった。
これ、今年最低の映画だな。