ヘヴンズ・ストーリー(★★★★☆)
@桜坂劇場Cホール
ポルノ四天王と呼ばれ、ポルノ映画内で作家性の強い作品を撮っていた瀬々敬久監督の集大成とでも言うべき作品。2010年10月公開。上映時間278分。
この映画の前年に園子温監督の『愛のむきだし』という、こちらも4時間という長尺の映画が公開されたため比較して語られやすい。実際に、共通点は多いと思う。
ひとつには、犯罪が描かれていることだろうか。しかしながら、『愛のむきだし』ではタランティーノのようにポップに描かれた犯罪が、ここではドキュメンタリー風の映像も相まって実に生々しく描かれている。
この映画観ててすごく怖いと感じた。
それは、犯罪が描かれているからというだけではない。
この映画の中で、殺傷事件が起こったり、人が人を問い詰めたりするシーンは、すべて昼に撮影されている。
昼間というのが、まともな社会人なら仕事をしている時間であり、そこになんらかの非日常的要素が入り込むとまるで安穏に暮している僕らにも逃げ場がないような気がしてくるのだ。
この手法は日本映画がお家芸としてきたものであるけれど、その中でもかなりスマートなものだと感じた。瀬々監督の作品はどれもロケーションが素晴らしいこともあって。
と、言いつつもテーマ的に見ると決して『愛のむきだし』より先に進んでいる気はしなかった。2000年代の気分というよりも90年代の気分にとどまっているような気がして。
けれども、これはこれで好きな作品です。